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お屋敷風の和風建築の相撲部屋を、土俵を残したまま料理店に改装した「割烹吉葉」。荒木田土の土俵を眺めながらちゃんこ鍋や海鮮料理を味わう。両国国技館と同じ内径4m55cmの土俵は相撲甚句などの舞台にもなり、五年に一度新しく築き直されるという。土俵のたたきしめられたなめらかな土の表情が、料理に身土不二の趣をそえる。土俵の施工を手がけたのは、アイワ美建・木内努さんだ。

割烹吉葉

割烹吉葉

小林澄夫さんに聞く

Q 荒木田土とは、どんなものですか?
東京の荒川沿いの荒川区荒木田原が名前の由来ですが、都市化でどんどんなくなっていって、現在は埼玉の古荒川跡などで採れます。名前だけが残ったのですね。昔は壁土や瓦の原料としてもつかわれました。粘土質で重い土で、通気性や排水性には劣るけれども乾燥させると硬く固まりやすいのでこういう土俵とか、土間にはとても適した土ですね。
Q 土間のある家はあまりもう見かけませんが、どんな理由で減ってきたのでしょうか?
生活文化が変わって、農業や漁業や、家で作業をする仕事の場合は作業場にもなるけれど、現在では家は住宅だけの場所になって広い土間はなくなってしまいましたね。もちろんスペースの問題もあるでしょう。また、昔は草履など裏の柔らかいひらべったいものをはいていたけれど、現在では靴底が固くてヒールがあったりして、いくら固い土といってもすぐに穴をあけてしまったり表面が凸凹になりますから、やっぱり土間は難しいでしょうね。土をたたきしめる代わりに、コンクリートやモルタル、石やタイルで床や土間をつくったりもしますね。

■たたき(三和土)とは
たたきは、かつての民家の土間や犬走りに施された床仕上げで、地域の粘土に苦汁(にがり)を入れて、たたきしめたものが始まり。土地により、真砂土(風化花崗岩)に石灰を入れた三洲たたきなどがある。この土の三和土の土間はコンクリートの土間と違って、歩行感もやわらかく疲れが少ないという利点がある。たたきを三和土と書くのは、粘土と石灰と苦汁の三つを和したものという意味。

(右)農家のたたき土間。この土間は作業場にもなった (左)民家の玄関のたたき土間。苦汁が湿気を呼んで苔が生えたりする

[左]農家のたたき土間。この土間は作業場にもなった。[右]民家の玄関のたたき土間。苦汁が湿気を呼んで苔が生えたりする

納屋の犬走りのたたき。地場で採れる赤土を踏み固め、たたきしめただけ

納屋の犬走りのたたき。地場で採れる赤土を踏み固め、たたきしめただけ

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