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すっかり静かになった梅が瀬に、村人たちが集まってきました。見ると頭に角をつけた者もいます。それは大喧嘩が始まりそうになったとき大きな声をあげた鬼……いいえ、鬼の格好をした喜一でした。どうやら鬼の姿をして、鬼たちの中にまぎれていたようです。実は最初に鬼喰いの話をした鬼も、ガタガタ震えだした鬼も、村人が鬼になりすましていたのでした。

「やれやれうまくいったわい。」

みんなうれしそうにほっとしています。

「それにしてもりっぱにできたなあ。」

村人たちも見上げて感心しました。

「ほんとにでかい鬼の牙じゃ。」

と喜一が言うと村人たちはどっと笑いました。

それはよく見ると、大きな大きな「つらら」でした。夜の間に村人たちが少しずつ水をたらし作っておいたものでした。そして足音も村人たちが、谷の上から米俵を落とした音だったのです。こうしてみんなで力をあわせ、鬼を追い払ったのでした。そして鬼のいなくなった村は、またもとのように静かになりました。

 しかし今でも、冬の寒い日に「梅が瀬渓谷」へ行くと、鬼の忘れていった何千もの牙がキラキラ光っているそうです。