和蝋燭
愛媛の山あいの小さな町でありながら、明治の終わりには白蝋の生産地として栄えた内子町。その華やぎを彷彿させる漆喰壁の町並み保存地区に、「大森和蝋燭屋」があります。
六代目店主、大森太郎さんの1日は、炭火にかけた大鍋で木蝋のかたまりを煮溶かし、その日つくるだけの芯を漬けることから始まります。木蝋とはハゼの実を蒸して圧搾したもので、これを漂白したのが白蠟です。芯は竹串に和紙とイ草、真綿を巻きつけた奥さんの手づくり。一度蝋に漬けた芯に45度C前後に保った蝋を素手でなすりつけ、固まったらまたなすりつけ……という「生掛け」の作業を夕方まで繰り返し、太らせてゆきます。50度Cとやや熱めの蝋で艶を出したら、「芯出し」の作業。炭火を熾した室で蝋燭をほんのり温めておき、やはり炭火で熱した包丁で先端を溶かしながらくるりと切ると、円錐形の芯が形よく現れます。「一気にやり切らないと、最後に竹串が抜けなくなる」と大森さん。狭い作業所、3カ所の炭火で夏は汗びっしょりになりますが、「まあ、割り切ってやるしかないね」と笑います。
うっすらうぐいす色がかった和蝋燭。炎は真っ直ぐに上に伸び、力強く燃えながらも、やがて脈打つように上下に揺れ動きます。洋蝋燭のように蝋が垂れてこないのは、和紙の太い芯がたえず蝋を吸収しながら燃えているから。心音にも似た炎のリズムを見ていれば、アロマキャンドルのように浴室で点す人がいるというのも、なるほどうなずけます。
大森和蝋燭屋
〒791-3301愛媛県喜多郡内子町内子2214
TEL 0893-43-0385
※ 和蝋燭は3匁(長さ約10cm)税込315円から8サイズある。