黒谷和紙
800年の歴史を持つといわれる黒谷和紙。平家の落武者が洛中からの追手を逃れて黒谷の里に隠れ住み、子孫へ残す生活の糧として作られはじめたといわれています。京都府綾部市の北部、舞鶴との境にあるこの地は、和紙の原材料である楮と美しい水に恵まれ、江戸時代には京呉服に使う「たとう紙」や「値札紙」、明治時代には養蚕業に使う「繭袋」として多く生産されて黒谷製紙組合も生まれるほど盛んでした。昭和30年代に洋紙が主流になると、和紙の需要は衰退しますが、黒谷一帯は古くからの純粋な手漉き技術を守り、世界にも知られる紙漉きの里としての存在感を現在も残しています。
現在、和紙職人として楮の苗を育てるところから、紙漉き、加工、デザインまで幅広い仕事を手掛けるハタノワタルさんは、美大を出て油絵を描いていたときに素材として「日本一強い和紙」を探していたときに黒谷和紙と出会いました。以来、綾部に移り住み、はじめの10年間は紙漉きに専念。楮煮、紙たたき、紙漉き、紙干しと工程をすべて天然の材料で行う丹念な紙づくりをしていくうちに、この和紙の良さをもっと周囲に伝えたいとクラフト作品づくりへ。さらに古くから日本の暮らしと家づくりを支えてきた強くて美しい黒谷和紙の素晴らしさを現代の生活にももっと生かそうと、自宅の壁や天井、床やテーブルまでも和紙を使って改装。仕事としても、紙漉きからデザイン、施工までを行い、多くの空間を手掛けてきました。美しい里山風景が広がるこの地にしっかりと根を張りながらも東奔西走し、幅広い層に黒谷和紙の魅力を発信し続けています。
ハタノワタル
HP:http://www.hatanowataru.org/