冬が本当に苦手です。夏が終わり秋の虫も声が聴こえ、秋が深まり冬に向けて緩やかに心の準備をするようなそんな年ではありませんでした。真夏の暑さは身体に堪えたし、秋は一向に深まらない。寒かったり暑かったり、そしてまた急に寒くなったり。秋がマッハのスピードで過ぎ去り、一足飛びに冬に突入しました。
前回登場したイクヤマ家の庭に植えた菊はこんなに枝葉を伸ばして咲いてくれました。植木鉢から解放されて自由になった菊が、どんどんと蕾を増やしここぞとばかりに花開く姿が愛らしくて。ありがとうね。

冬だと思うと何か急に甘いものを食べだすのも例年のこと。米を食べ和菓子やチョコレートに手が伸びる。そして日本酒が飲みたくなる。そんな風に糖分を冬に溜め込むのは何故なのか。調べてみるとちゃんと理由があるようです。
冬に甘いものを食べたくなるのは気温が下がると体温維持のためにエネルギーを必要とするから、だそう。植物も同じで冬になるとみかんや柿、大根やニンジンまでも甘くなるのは気温が低下する冬に、凍らないために糖分とアルコール分を生成するのだと。自然の摂理の不思議さ。理にかなっていることのすごさ。

植物と人間の身体のしくみの共通点がそこにもあると知って、私の身体も自然の摂理に叶っていることが、不思議に嬉しいな。
冬になると、気持ちが沈みやる気が低下してしまうのはやはり糖分を取り過ぎるからだとも言えます。鬱の人は血糖値も高い。糖分は脳の活動を鈍感にもするからだそうです。
去年の冬、血糖値の高さを医者に指摘されました。思い切って体質改善を試みることにし、12月から3か月間、食事を見直してみました。ごはんの量を三分の一にし、一日1万歩を目標に毎食後、2か月間歩いてみたのです。努力の甲斐あって、2月の検査では正常に戻っていたので医者もびっくり。気持ちが落ちがちな冬にひとつ打ち込むことがあると本当に助かります。今年もやってみようと思います。
11月上旬東京へ行きました。森美術館で開催中のルイーズ・ブルジョワ展を見るためです。
彼女の作品は自分の中の何かをいつも震わせる。展覧会を見るために、少し心を落ち着かせたいと考えた私は、六本木で喫茶ルノワールに入る。クラシックな内装とバッハのパルティータにしばし心安らぐ。東京の人ごみが苦手な私。店員の無愛想さにがっかりもしつつ、ここはまあ、赦すとするか。
ルイーズは自らの幼少期のトラウマ体験に苦しめられながら、作品を作ることを精神の安定剤としていました。彼女についてのインタビューや、長年アシスタントを務めたジェリー・ゴロボイ氏のトークを長年にわたり聴いていた私。自分の中に長年ある哀しみは昇華ができるのではないか、と彼女が教えてくれた。写真でしか見た事がなかった代表作を実際見ることができ感激。いつかまたNYに戻って公開されている彼女のスタジオを訪問したいな。
ルイーズの展覧会のカタログを抱えて金沢に戻る。この一冊でこれから始まる長い冬の辛さを乗り越えられる気がしました。