私の住む石川県金沢市は、人口45万の都市です。古いものと新しいものが共存すると言いながら、観光都市金沢には表の顔と裏の顔があるように思います。
武家屋敷、21世紀美術館、兼六園、東山茶屋街、近江町市場などのメインの観光地から、歩いてもさほど遠くない場所に、空家がたくさんあるエリアがあります。その空家群を資源ととらえ、それらを活用し、新しい考え方のもと再生しつつ利用しようとしているのが「綴る」の活動です。メンバーは月会費を払えば、これから少しずつ増えていく空家のすべてを利用でき、企画会議で意見を述べ、企画に参加することができます。家々が個人のものではなく、共有するものとしてどこまで可能なのか、「所有する」というこれまでの考え方をがらりと変える実験的な試みでもあります。

発起人である金沢市の「ことのは不動産」松本有未さん、建築家の山本周さん、そして私中森あかねの3人が理事となり、メンバーを少しずつ増やしながら、ゆるゆるとした足取りで歩み出しました。
メンバーは写真家、カフェオーナー、ギャラリスト、建築家、アートキュレーター、日本文学者、会社員などさまざま。それぞれ自分の仕事をもちながら、この活動に携わっています。とはいっても、まだ始まったばかりの手探り状態。
空家の一つ目がイクヤマ家。この家は金沢市が仲介役となり、大家さんとの5年間の契約を結び、無償でお借りしたものです。この5年間皆の活動拠点となります。私たちがまず手掛けたのがキッチン。

イクヤマ家の台所に残っていた、かわいらしい四角いタイルと、床模様のリノリウムが緑と白の四角い模様だったことから、キッチンカウンターは、タイルがよいのでは、と意見が集まり、改修がはじまりました。はてさて、どんなキッチンができたのかは、次回のお楽しみとして、もう一つの特徴は、奥にある、小さな坪庭。小さな、と言ってもその奥は裏の民家の借景となって、何とも贅沢な眺めになっています。
さて、中森はまず、このお庭の手入れから始めようと、雑草が生い茂りだす前に、まずは庭の整理をはじめるとしましょう。先ずは今生えている雑草を取り除いてみました。こうしてみると石がいろいろ埋まっているのがわかります。
家から持ってきた植物たちを、移植したらどうなるのかな、と思い、まずは椿の鉢を持ってきて植えてみました。
次に紫陽花の鉢植えを移植。

思い切って、毎年鉢植えで花を咲かせていた小菊も持ってきました。
さあ、これから何を植えよう、どんな花が咲くのかな、何が芽をだしてくれるのだろう。新しい活動と新しい庭が同時に進行していく、なんだかすべてが新しくて、不思議で、ワクワクする種が撒かれたように思います。
つづく