愛知県編 その四

昔の風情が残っている常滑のやきもの散歩道。「その三」で登窯に出会った話をしました。

調べてみますとこの「登窯」は1887年(明治20年)頃に築かれた窯で、1974年(昭和49年)まで使用され、日本で現存する登窯としては最大級。高さの異なる10本の煙突が特徴です。1982年(昭和57年)に国の重要有形民俗文化財に指定され、2007年(平成19年)には近代化産業遺産にも認定されているそうです。

ところどころにお店があってそぞろ歩きをしながら足が止まります。道沿いにある「然工房」の板看板。その風情にただならぬ引力を感じ、奥に進むとゆるやかな坂の両側に焼き物が所狭しと積まれていました。

然工房の主、平野祐一さんはこの工房の4代目。常滑市内に唯一残る「登窯」の窯元に生まれ育ちました。初代はなんと登窯の建設・使用に携わった方だそうです。

土は自ら常滑の土を掘り、時間をかけて生成したもの。薪窯で焼かれ土の状態や焼く時の温度によっても色合いが変わっていきます。

焼き物は表面に炎のもたらす痕跡が面白く残っています。作品の出来上がるまでの労力と時間が焼き物そのものに練り込まれているよう。作品が棚に狭しと並べられ、どれもひとつひとつ風合いが違って力強く魅力的です。手で触って手触り感を確かめます。平野さんは丁寧に私たちを案内してくださり、作品について説明してくださいました。

彼の作品は日本各地や海外の展示会でも多くの作品が出品され、受賞歴も多数。現在も、アメリカのボストン美術館に作品が収蔵されているそうです。

多くの人々を受け入れて来たであろう、この場所には土とともに歩んできた長い長い時間が積もっています。焼き物には同じく、土を掘るところからかかった長い時間が詰まっており、良い作品は作り手の名が消えても「もの」は未来まで残っていく。人の営みも同じ。今生きている場所、自身を取り囲むものを全て含んで「人生」と呼ぶ、そのことに何か厳かな畏怖の念を抱くような旅でした。