愛知県編 その三

ヴィンテージショップを後にした私たちは、中世から続く日本のやきもの文化の遺産、常滑に向かいました。
常滑焼は愛知県常滑市を中心とし、知多半島内で焼かれる炻器(焼き締め)のことで、1100~1250℃で焼成する。瀬戸焼(愛知県瀬戸市)、越前焼(福井県越前町)、丹波立杭焼(兵庫県丹波篠山市)、備前焼(岡山県備前市)、信楽焼(滋賀県甲賀市)と共に、日本六古窯として平成29年に日本遺産に認定されました。

細い道なりに歩いていると歴史に触れるような街並みが現れます。お酒や調味料を量り売りしていたころの焼酎瓶、上下水道に使われる土管や、電纜管(トンネル内に信号ケーブルなどの保護のために使われるもの)など、明治期に工業製品を作っていた際に、製品化できなかったものが再利用され石の代わりに積み上げられています。

通りの途中、窯跡に出会います。斜面に沿って奥に深く器を積み上げるようにし、燃焼ガスの対流を利用して焼く登り窯。今は使われていない窯はシーンと鎮まっており、厳かな儀式場所、あるいは瞑想の空間のように見えました。

ぶらぶらと歩くと道なりに工房がいくつもあります。目抜き通りにお店を見つけました。常滑焼の若手作家を中心にしたものが所狭しと並べられています。

表面がざらっとして、テクスチャーが味わいのある深皿を見つけました。使い勝手がよさそうなので早速購入。

どこか洗練されたデザインのものが好きです。かといって、デザインばかり重視して使い勝手の悪いものは苦手です。日々使うのですから洗いやすさも肝心です。大きさ、重さ。全てにバランスの取れたものを探し当てるのは実はとてもたいへんなこと。生活全般に好きなものを置きたいとなると、趣味の合わない人との暮らしが辛くなりますネ。結果一人がイイ、ということになってしまいます。目に映るものにこだわりがあり過ぎるというのもちょっと困ったことですね。

歴史ある焼き物を現代にどうつなげていくか。個人の身に付いたものであるかぎり時代と共に技術も感性も変化していく。日本が世界に誇れる工芸の技術を残しそれをどうプロモーションしていくか、そこの産地も直面している課題だと思います。時代と共に移り変わっていく「もの」にまつわる考え方やカテゴライズはこれから先も時代と共に変遷していくに違いありません。