静岡県編 その四

静岡県島田市は東海道五十三次の23番目の宿場町「島田宿」として栄えたところ。

島田市に入ってまず向かった先は、清水屋です。創業は江戸享保年間というから約300年近くの歴史がある老舗の和菓子屋。清水屋黒大奴(くろやっこ)は島田市の人なら誰でも知っている名物なんだとか。

その姿形は黒くてコロコロっとして、ツヤツヤテカテカ。一口で口の中に入るからパクっといけますが、今回は味わうためにそっと半分かじってみました。

ねっとりとした皮。馴染みがある食感。羊羹?でも何か後味が違うぞ。ほんのりと何かの味がしています。長谷川さんのお母様は何か含み笑いをして私たちの様子を伺うご様子です。

「ふふふ、実はね、この黒大奴は皮に昆布が練り込んであるんですよ」

まあびっくり!そう思ってもう一口。なるほど言われてみれば、ふんわり昆布の風味がしてきました。さらに、上にのっているけしの実がワンポイントで何とも可愛いです。内部のこしあんはさらっとして甘さも控えめ。これだといくつも食べられそうです。

名物小饅頭は享保年間(1722年頃)に誕生、黒大奴は明治に生まれたお菓子。ウエブサイトにはこうありました。

「いずれの和菓子につきましても誕生からこれまで、伝統の味を守って参りました。伝統の味を守るということは、毎日同じことの繰り返し、という意味ではございません。時代の波によって伝統の味が変わらないよう、努力と挑戦をし続けるということです」

変えることより、変えない、守ることの努力と挑戦、納得がいきました。

和菓子をいただいたら、今度は濃い緑茶が飲みたくなります。長谷川ご夫妻に牧之原公園の茶畑を案内していただきました。丘の上から見渡す広大な斜面に一面広がる茶畑の美しさ。こんもりと蒲鉾型になった茶の木が連なって青々と新葉を出して輝いています。この茶の木の管理と茶摘みの仕事は気が遠くなる作業です。膨大な作業量と根気がいるの比べ、お饅頭を食べ、お茶をいただくのは一瞬の事。その一瞬のための努力。

たくさんの失敗をして、自分の来し方は自暴自棄。物事に丁寧に向かってこなかったな。そしてどうにもならない事にしがみついて、ぎりぎり歯ぎしりしても結局思う通りにはならない世の中。実は自分の力不足だったと気付かず、いつも何かほかのもののせいにしていたな、と旅の合間に茶畑を見て突然降って来る思考。どうも旅は考え方の癖を攪拌するようです。

「生かされている感謝の気持ちを忘れてはいませんか」と、自らに問うてみるのです。