静岡県編 その二

さて浜松市の次の訪問地は、小高い丘の上の一軒家を開放して自然食をふるまっている鴨家キッチン。一見雑草だらけに見える庭。実は自然農法によって植物がストレスなく育つようにと工夫されているんだとか。植物同志お互いにテリトリーを分け合いながら共生しています。

植物は地面に根を張って動けないのですが、だからこそ何か目に見えない気のようなものを発しているらしいのです。植物の根元から分泌される化学物質が、異なる植物間の『対話』の鍵になっているというのです。例えば害虫に襲われた時、植物たちはその害虫にとって天敵である別の虫を誘う匂いを発し、自分を害虫から守る事ができるということです。そして、今危険な状態にあるから気をつけるように、と周りの植物に信号を発しもします。また、どこかの木が弱ったら、その場所を自分のテリトリーにしようともぞもぞと地下茎や芽をそちら方向に伸ばし、場所を確保していきます。そうやって共存共生する植物の静寂と沈黙の世界。私たちの出す二酸化炭素を吸って酸素も出し人間の命にも深く関わっている植物。無くてはならない植物の恩恵を受けて私たちの命も守られています。

「地下にはパイプが埋め込まれて水がスムーズに循環されるようになっています」。と鴨家キッチンオーナーの金澤真生子(かなざわ・まおこ)さん。庭で作られているのは、アロエ、ローリエ、もみじ、オリーブ、ゆすらうめ、クコ、桃、山椒、びわ、いちじく、アーモンド、桑、ゆず、はしばみ、バナナ、ライム、パッションフルーツ、ミント、よもぎ、ふきのとう、ゆきのした、たんぽぽ、つわぶきなど、山野草や実の成る木ばかり。季節ごとに夢が膨らみます。

月ごとのカフェ、昨年中止になった野草講座も再開催され、参加した人たちによって摘まれたお庭の植物はお料理になって食卓にあがりました。

私たちのために用意してくださったランチは鹿肉を中心にした彩りも鮮やかなものでした。鹿のちらし寿司、摘み草とザクロのサラダ、原木シイタケのグリル、キャロットラぺ、茹でた落花生、野菜の塩糀スープ、柿・無花果・栗の渋皮煮の天ぷらがにぎにぎしくプレートに並びました。感謝を込めてありがたくいただくことにいたします。