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アプローチの仕掛け

まず、車寄せとアプローチのある東側の写真を見てください。ここは2階のテラスが張出して、そのテラスはムベの葉で緑の壁になり、テラスの下にもワイヤーを張って、緑の壁を下まで拡張しています。ちょっと緑に覆われた街のポケットパーク的な雰囲気をつくり出していて、気持ちいい場所になっていますよね。此処にちょっと小さめでかわいい車が止めてあれば、もう出来すぎですよ。

 

東側車寄せとムベの緑のカーテン

東側車寄せとムベの緑のカーテン

 

しかし、敷地と駐車した車は微妙な関係です。街にはほとんど良い影響は与えていませんし、何かと邪険に扱っているのが現状。とくに小さい敷地の場合に車庫は道と直接に繋がり、街に無機質な顔をさらし、さらに金属製の扉がついていたら、もう最悪。それが続けば、シャッター商店街の住宅地版的な風景の一丁出来あがり、となるでしょう。
必要なものなのに邪険にしている。こういうのを設計する側のサボリといいます。必要なものを綺麗におさめるのが設計者の技量ですからね。
邪険にされれば寂しくて、どうしても表情が暗くなってしまう。だから〈一人ぼっち〉は可哀そうじゃないか、何とかしようよ、と田中さんは思ったのかしれませんね。もちろんこれは私の深読みですから、定かではありませんが。
でも、ほかに車との付き合い方はあるでしょうか。個々に車のスペースを選択しない形もあるでしょうね。それは「向う三軒両隣り」でスペースを融通し合い、できれば車もシェアし合うという形です。でも、これは明日への希望でしょうか……。ただ、田中さんだったら、どんな姿を実現してくれるのでしょうか。
次は、車寄せの隅から続くアプローチに注目してください。もしも、田中さんが若い設計者に、アプローチのつくり方を聞かれたら、この「短い」アプローチはどのように答えるでしょうか。ここは型を破りながらそれを感じさせない、秘密の小路のようなアプローチです。さあ、秘密が解けるでしょうか。

 

短いアプローチとそこにおかれたミニチュアの鬼瓦

短いアプローチとそこにおかれたミニチュアの鬼瓦

 

私は田中さんの設計塾の講義を聞いて、アプローチには人を迎え入れる家人や設計者の気遣いを感じ取りながら歩く時間と視界の変化も必要だと教えられたと思っています。だから、どうしてもある程度の長さが必要になると感じていました。それだから、3段の階段を上るとポーチにつくアプローチはあまりにも短いのです。しかし、実際は如何だろう、道からは緑の天蓋がポケットパークのような車寄せをつくり、それがアプローチの奥行きを補填し、奥深さをつくり、大谷石の階段の周りの笹やセンリョウ、ツタなど数種類の葉が足元の密度をつくり、そこに置かれた鬼瓦や小さな丸いオブジェは視線を動かし、軽く結界も感じさせている。短さの中にもたくさんの仕掛けがあります。
う~ん、やはり言葉で説明するには限界があり、やはり体験しなければわかりませんね。というわけで、ポーチと玄関は次回に挑戦します。