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設計条件の読み方

自邸(国立の家)は1994年12月の竣工です。『向こう三軒両隣り』が出版されたのは2005年11月ですから、11年の開きがありますが、両者の基本の視点は同じと思っています。だから、この本に書かれている想いをどのような形として実現したのかを、自邸をモデルケースとして私感も交えながら具体的に観察して行こうと思っています。

まず、町とのかかわりについて外廻りから始めましょう。写真は南側の主前面道路側からと、アプローチの在る東側と車寄せを観た写真です。南にヒイラギモクセイの生垣、山モミジのシンボルツリーその下にアベリア、車寄せの上のテラスにムベなど緑で覆われています。変な家ではありませんが、普通の家でもありませんよね。

  • 東側

    東側

  • 南正面

    南正面

  • 車寄せ

    車寄せ


       

話を進めるその前に、田中さんの自邸の概要が必要ですよね。まずは図面を見てください。

自邸は東京の国立市に建つRCの地下を持つ木造2階建ての家です。敷地面積約78㎡、建築面積約42㎡、延べ床面積は約119㎡で、2階は台所と家族室の1室空間、1階と地下は、それぞれ仕切られた客室やプライベートな部屋たちで構成されています。

では、この家の設計条件はどうだったのでしょう。『住宅建築』1998年1月号で掲載した時に、下記のように書かれています。

●ゆったりした家族室。
●独立した客室。
●ちょっとした書斎。
●十分な収納。
●計画された庭(緑)。
●近隣に配慮した家。
●以上を満たした経済的な家づくり。

そして、小さな敷地に建つ家の「一つの型」をつくりたいという「希望」があったとも書かれています。それ故でしょう、掲載時の副題に「スタディ・ハウスD」と入れています。

突然ですが横道に逸れます。何故「D」なのかを田中さんに聞くのを忘れましたが、どうも最初に「A」プランを考えて、実施したのは「D」番目のプランだったのではない、別の意味がありそうな感じなので勝手に想像してみましょう。皆さんはどう思いますか。

私は、A・B・Cの後と考えると「D」は4番目です。オリンピックでは金・銀・銅のつぎですが、表彰台には乗れません。
メダリストはヒーローでしょう、そして建築で考えれば《作品=特別な一品》をつくる行為に近いのではないでしょうか。だから「D」は〈特別に際立たないが、そうとうに鍛えられている〉と読むことができそうなのです。

こんなように考えてみると「型」とはこのように特別に際立つ必要はないが、しかしアイデアがいっぱい隠された鍛えられたものであってほしいという田中さん的な想いが「D」に込められていると思えてくるのです。おそらく深読みでしょうから、きちんと確かめてみて、また報告します。

道草が長くなってしまいました。だから外廻りの話は次回です。