Vol.4 フグの寝姿

Vol.4 フグの寝姿

昔から疑問だったことのひとつに魚はいつ寝るのだろうというのがあった。回遊魚は速度を遅めて、泳ぎながら寝るとか、寝ないとか。我が家のフグはときおり寝ている姿を見かける。たとえば朝、出社前に水槽をそっとのぞくと、流木や水草の陰で砂利におなかをぴったりつけて体を休めていることがある。これがフグの寝姿だ。眠っているからといって眼を閉じるわけでもなく、眼はしっかりと開いたまま、しかし起きているときはせわしなく動いている眼がどこか一点を見つめて動かなくなる。

我が家では夕方から夜中まで、7〜8時間タイマーでライトを照らしているが、基本ライトが点灯している間はフグたちは活発に動いている。私が帰宅してからはもちろん寝る頃にはまだまだフグたちの活動時間は続いている。休日などで昼間家にいるときに、遠目に水槽を見ると、フグたちはたいてい目につかない物陰でじっとしている。よく見るとおなかを底や葉の上につけている。寝ているのだ。日中主人が家を空けているときは、こうしてうたかたの時を過ごしているのだろう。そう考えるとフグの睡眠時間は案外長いようにも思う。

フグの寝ている姿を見ることは稀だ。なぜなら彼らは人間の気配に気づくとすぐさま目を覚まし、近寄ってくる。主人に気遣いを欠かさない生き物なのだ。たとえそれが餌のためであったとしても、私はそのフグの勤勉さを愛している。ぐうたらの代表格のような実家の犬すら、餌と散歩の時間以外は家族に近寄りもしないが、それを思うと犬よりも忠実なところがフグにはあると思う。

呼んでも来ない駄目犬にお困りの寂しい飼い主さん、ぜひフグを飼うことをおすすめしたい。呼ばなくても彼らは人間を見つけると我先にと近づいてきてくれるのだから。