フグを飼い始めてもうかれこれ3年が経とうとしている。最初は試行錯誤した飼育も、今ではだいぶ板につき、水槽環境も落ち着いてきた。そんな我が家の水槽だが、最近気がかりなことがひとつある。4匹いるアベニーのうち1匹がひどく痩せてしまったことだ。ぺったんこになったお腹周りや落ち窪んだ瞳、まるで煮干しのように変わり果てた姿に目も当てられない。フグを飼い始めた当初からいる子だから、もしかしたらそれは老いが原因なのかもしれない。どちらにせよ痛々しいその姿を毎日見るのはとても辛い。それでも食欲は変わらずで、ほかのフグに負けじ劣らずアカムシに食らいついているのが小さな救いでもある。

　以前、病気で星になってしまったフグがいたが、彼も同じように少しずつ痩せていった。最後はご飯が食べれなくなり、底にうずくまることが多くなった。ときどき不安になってピンセットで静かに突くと、よろよろと泳ぎ出すのだが、またすぐ隅でうずくまってしまう。そんなことを繰り返しているうちに、亡くなってしまった。生き物を飼っていると「死」は避けられない。人間自体がそうであるように、生と死は表裏一体なのだ。共に暮らした生き物と別れ、悲しむ私の姿を見て、「もう飼ったらだめだ」といってくれる親切な友もなかにはいる。でも彼らが私に遺していくものは悲しみだけではない。彼らは悲しみと一緒に、温かいものを私の上に確かに遺していってくれる。そうはいっても別れは辛い……。

　1匹弱ったフグがいると毎月の水換えもどうしたものかと悩んでしまう。網ですくったりすることも病身にはすごく負担なのだろうと思い、やめておこうかとも思うが水質が悪くなるのも気になる。こんなとき人間もフグも健康が1番なのだなと痛感する。今年もあとわずか。できれば一緒に年を越したい、そう願うのはフグにとっては酷なことだろうか。飼い主のささやかな祈りが少しでも天に届いてくれることを願うばかりである。