タイ編 その五

プロモーションビデオはなんとか完成しました。いよいよその成果を発表するため、タイのシンポジウム会場にやってきました。場所はバンコクの中心部にあるジム・トンプソンアートセンター。

ジムトンプソンは元アメリカの諜報員。タイでシルク事業を展開し財を成した人物です。1967年にマレーシアで行方不明になり、その背景は謎に包まれたままです。 彼の住んでいた家のすぐ近くにあるこのアートセンターは、 建築、現代美術、学習、文化イベント、自然を通じて、バンコクの住民、学生、観光客が集まる場所です。

会場ではアーティストMIT JAI INNのDREAMDAY が開催されていた。

宿泊先から徒歩で10分ほどのところ。日本からは4人で出発した私たち。現地でのプレゼンテーションのため、早速準備にとりかかった。

制作した映像を見せるためのスクリーン、メンター、メンティーがzoomで言葉を交わしながら交換した自分たちのプレゼントを公開することにした。同行した清水冴さんは、自分の名前を刺繍する「Stich your name」のワークショップの準備をする。刺繍糸を輪状に並べて視覚的効果を狙う。

タイの大学生

現地では美術大学の学生たちが、お手伝いをしてくれた。タイでは大学生も制服を着ることになっているそうだ。みな明るく優しい笑顔。

シンポジウムでは、タイ、シンガポール、インドネシア、イギリス、台湾、マレーシア、日本、オーストラリアなど多様な国籍の女性達が集合し、それぞれ自分達のしてきた事の成果を発表しあう。

私も舞台に駆り出され、たどたどしい英語で対話をする。映像の制作過程、コンセプト、メンターとしてメンティーたちが満足する展開になったかどうか。そしてその結果がちゃんと形になったかどうか、それが一番の心配であることを話した。

映像は多くの人たちが食い入るように見てくれた。こんな風にタイで上映できたこと、何か奇跡のように思える。

それぞれのワークショップも多くの人たちが参加して盛り上がる。

どのアジアの女性達も芯が強く、アジアの女性達が繋がり合って助け合う姿がこのシンポジウムではそこかしこに見られた。私にとって初めて会う人がほとんどなのに、なぜかずっと昔から知り合いだったようにすぐ打ち解けて、なじんでいく。そして許し合う、認め合う。そんな出会いに心が温まる。

シンポジウムは一日目が無事終わり、ほっと胸をなでおろす。明日は解放されて、タイ観光に出向くのだ。タイは12月に入り、一年で一番過ごしやすい乾季になった。日本は雪が降っているのだろうか。子どもたち、孫たちはどうしているかな。一番緊張するところが終わってほっとして、気が抜けて急に日本の事、飼っている鳥たちのこと、家族のことが気になりはじめる。