タイ編 その三

タイでのシンポジウムのために、私達はEBRUのプロモーションビデオを制作することになりました。その会場の候補として選んだのは金沢市大手町の洋館です。東京にいるEBRUのメンバーに会場の写真を送らなければなりません。ストーリーの中での重要な枠割を担う、洋館に住む女性の候補として金沢在住のコンテンポラリーダンサー山下きよみさんを誘って下見に行きました。

大手町洋館は 金沢市 兼六園の近くにある大きな洋館です。ウイリアム・モリスの図案柄に見える壁紙、玄関と階段途中の踊り場の窓はステンドグラスが嵌められていました。長い廊下の漆喰壁には縦長の当時の電話機がついており、つづれ織りのカーテンが広いリビングの観音開きの窓辺にかけられていました。 大きなダイニングテーブルがある居間とキッチンの間に両開きの棚があり、ここを通して食事を出していたのが想像できます。洗面所の四角い白いタイルやドイツ製とみられる水洗トイレ、二階には天井までの本棚が壁を覆っていました。
すべての意匠が当時の金沢ではあり得ないモダンさです。

山下きよみさんも私も内部に入ったのは初めての事。 この瀟洒なお屋敷内にどんな人が住み、家族構成はどうであったか、どんな食事をし、どのような人たちが訪問したのか。謎は深まります。

洋館に住む女は洋館を訪ねる女性は舘田美玖さん、舘田さんはペインターであり、今回音楽で使う曲は女性の声がいいな、と考えていた私は彼女にお願いしようと考えました。

仮の衣装を着て試してみる山下きよみさん。
仮の衣装を着て試してみる山下きよみさん。

撮影はオランダ人のニックさんに依頼することに。彼もこの洋館が気になっていたようで、私の誘いを喜んで受けてくれました。

それらの基本的なプランと、ストーリ-、撮影した写真などをEbRuの3人に見てもらって制作はどのようにしていったらよいか、これからプランニングがはじまります。