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セツ先生と水彩と

金子なぎさ(イラストレーター)
1992年~1994年在籍

ずいぶん昔になってしまったけれど、セツモードセミナーの入学抽選の日を思い出す。
長い列に並んで、箱の中に手を突っ込んで白い札を一つ取り出した。
何も書いていない。ハズレかな。と、思った時、「おめでとう!当たりだね!」と言われた。
「えっ!」と思って札を裏返すと、見事当選。
抽選なのに、受験して合格通知を貰ったように嬉しかった。

セツでの初めての水彩の授業。
モデルの男の子の周りを生徒たちが思い思いに歩き回る。セツ先生は「どこでもいいんじゃなくて、自分が描きたいと思うところにイーゼルを立てるのよ!」と声をかける。
なんとなく描けるかなと思うところを見つけ、自由に描くってこんな感じ?と思いつつ3時間。
皆の絵に混ざって自分の絵が並べられた。

どきっとした。
絵の余白が余って、花を人物の横に描いた人、人物画には全く見えない人。でもきれい。そんな自由さの中で、私の絵はいかにもまともに見えた.
間もなくセツ先生がこの絵はだれ?と言った。私ともうひとりの人を指して。
なんと言われたのかははっきり覚えていない。けれど、このままではだめ。のような、もっと自由に描けるようにやっていきなさい。とかそんなふうに言われたのだった。

「お前たちはいいねー!ふつうに描いてもデフォルマシオンしてるもの。僕なんて意識しないとすぐ上手になっちゃう!うらやましいなーA!」
セツでの合評会では一斉に生徒の絵が並べられる。そして生徒に次々にリレーさせて良いと思う絵を選ばせていく。皆の前で絵を選ぶのも勇気が入った。
ときどきだめな絵を選ぶと「おまえってこんな絵がいいと思うの?ダメね-!」となじられる。
そうして見る目がだんだんと養われていく。良い絵がわかるようになると自然と自由に描けるようになっていった。

はじめはおおいに悩んだセツ劣等生の私も2年目になる頃、「おまえって天才!A!」と声をかけていただけるようになった。その時の嬉しさは、本当に忘れられない。

絵を描くってなんて幸せ。なんて自由。セツ先生は軽やかに導いてくれた。
そして「才能ってやめないことよ。」とも。(終わり)

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  1. 星信郎 より:

    金子なぎさ さん たぶんMJ展でもお会いしてるかも知れませんが星信郎です。

    ずいぶんセツ先生を上品に描いてますね、、、脚の長さも超オマケ、 デフォルマシオンとってもウマクいってると思います。 ここはセツのロビーでしょうか? 空間が明るく静かで美しいです。

    セツ先生の「ぐるっと回って自分の好きなところ見つけなさいよ!」しょっちゅうの口癖でしたね、よくもまあ同じことをくり返しくり返しと苦笑してましたが、よくよく考えてみればそれって大事ですよね。いつでもどこでも、いつまでも、何かをみつける心。

    またMJ展を楽しみにしています。星

    • 金子なぎさ より:

      星先生

      コメントを寄せていただき、感謝と恐縮の思いでいっぱいです。

      デフォルマシオン、うまくいっています。。て、嬉しいです!

      はい。セツのロビーのつもりで描きました。セツ先生が絵を見る時、一瞬静かな空気になる時があって。。
      コーヒーのよい香りと中庭のつるバラ、などなど思い出しつつ。(つるバラは星先生が挿し木されたのです。。ね!)

      MJ展では大変お世話になりながら、「私のことは覚えておられないだろうなぁ」と引っ張りだこの星先生を遠巻きにしておりましたこと、
      失礼いたしました。 次回、ぜひご挨拶させてください。

      ありがとうございました。

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