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「私のセツ物語」に幕

絵と刺繍しらや(絵と刺繍の作家)
2003年~2005年在籍

わたしがセツに通い始めたとき、すでにセツ先生はいらっしゃいませんでした。

当時喫煙者だったわたしはよく中庭でタバコを吸ってお友達とおしゃべりしていました。デッサンがはじまってもおしゃべりしているときもありました。先生方はそんなとき、生徒たちに「はやく行って描きなさい」とも、「描くのをやめてしまいなさい」とも言いませんでした。描く気分にならずに帰るときもそうです。セツの最後のときにお友達とコーヒーをふたたび飲めてうれしかったです。中庭が大好きだったんだな、と初めて知りました。いるときにはそんなこと思いもしなかったのです。いつも季節の花が咲いていました。いつでも終わってしまうときに、それが貴重なものであったとわかるものだと思います。あらためてはいる建物はセツ先生そのもののように思えました。

なぜかセツに行かなくなってからも行く先々で「セツに行っていました」という人に出会え、その幸運のおかげで15年経った今も作品作りを続けているのかもしれません。元セツの友人(彼女ともセツではない場所で出会いました)との二人展のときに、星先生に作品を見てもらえてうれしかったです。星先生も私たちの代では憧れの先生でしたから。

セツにいたときにはセツの絵がわからないしできない、と思っていました。
セツの卒業審査で、村松先生に「君はまだ本当の自分の絵を知らない」と言われたことを覚えています。卒業できないままでもその後も制作活動を続けることができ、最近は「これが自分の絵なのかも」と思えるようになってきました。セツの絵をあらためてたくさん見たら、どんな気持ちになるんだろう。セツにいたときよりももっとセツの絵を好きになる気がします。

セツの人に会うと、絵を描いてみよう、と思ったはじまりの気持ちに触ることができます。なにかまた、描いてみたくなります。セツの人たちと、絵への思いが好きです。

 

ユニークな学校にふさわしい、ユニークな企画として、楽しんでいただいた『私のセツ物語」は、今回が最終回となります。快く、絵と文をお寄せくださった100人を超えるセツOG、OBのみなさま、ありがとうございました。声援や情報を贈ってくださったみなさま、ありがとうございました。次回は、毎回、愛情たっぷりのコメントをいただいた星信郎先生に「私のセツ物語」を語っていただく予定です。お楽しみに。

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  1. 星信郎 より:

    この抽象のような具象のような白壁感、ひかえめな色彩が心に響く。いっけん優しそうに見えて尋常で無いのは確かな空間意識でしょうか?
    それとも心地よい布地の質感調和でしょうか?
    僕は、このブルー、ストライプ布地のシャツを2枚もっています、一枚はもう襟がすり切れ芯地が出てしまったが、どうにも捨てきれない。
    先日のデッサン会のときもそのシャツを着て、ベージュ色芯地のデッサンポシェットめぐろみよ作に、エンピツ消しゴム入れて参加しました。

  2. しらや より:

    青のストライプは永遠にセツのイメージです。すてきなお言葉をありがとうございます(^^)

  3. 匿名 より:

    私のセツ物語、
    upされるのをいつも楽しみにしていました。
    これで、最終回ときいて
    少しさみしく感じています。
    セツという場所からの色んな時代の景色をみたような。
    星先生とのコメントのやりとりもとてもあたたかくて、大好きでした。

    チルチンビト広場さん
    ありがとうございました。

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