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セツとの出会いと思い出

大塚ミチコ(イラストレーター)
1987年~1994年在籍

私とセツ・モードセミナーとの出会いは「鳩よ!」という雑誌の創刊号のセツの新入生募集の広告でした。
 ピンクのザラ紙で単色の印刷でとても地味なものだったけれど、セツ先生のコートを着た男性とベレーの女性のファッションデッサンはとてもチャーミングで印象に残るものでした。
 ちょうど専門学校を卒業して就職活動もしたけど、これからの自分の将来に疑問を持っていた頃でした。

私が入学申し込みに行った時は希望者は抽選制で選ばれるようになっていて2回抽選に外れ、くじ運の悪い私は3回目でやっと入学する事が出来ました。

初めての水彩画の授業でいきなりAをもらいロビーに展示してもらい、しかも活躍されている先輩方とセツ先生が展示されている私の絵の前で撮影された写真が雑誌「ハイファッション」に載りました。有頂天になっているのも束の間、以後しばらくAをもらえませんでした。
 セツで重要とされる自由な絵をどうやって表現するか本当に難しかったです。      
 イラストの仕事をする今でも難しいと思うことが度々あります。

アート展の搬入のお手伝いの時だったか友達とお昼に買ってきた中華弁当をキッチンの前で食べているとセツ先生が私達を見て「なんだお前達、そんなものばっかり食べて。こういうのも食べなきゃいけない!」と冷蔵庫からタッパーに入っている切っていない茹でたほうれん草を一本ずつお弁当の上に乗っけてくれた事、毎日6階の階段を登り降りしているだけあって、お元気な先生だったので「先生、元気だから100歳まで生きるんじゃないですか?」というと「やめてくれよぉ。」と笑いながら言われていたことを今でも思い出します。

最後に私のセツとの出会いのきっかけになった広告に「卒業後それを直ぐにイラストやファッションの職業に結びつける人は勿論多いけれど、もっと大事なのはその人の内容が確実にそこから変わっていくということでしょう。」と書いてあります。
 本当にその通りだと今読み返してみて心からそう思いました。

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  1. 星信郎 より:

    大塚さん
    これはびっくり‼︎ 繊細で大胆で透明で、リアルで情感たっぷり、インデゴブルーがカッコイイ! 本当は、こうゆう絵がいちばん難しいんだよね。脱帽!です。

    角田君は今、藤野駅のひとつ先でレストランをやってるらしいよ、もう行ってみましたか?

    • 大塚ミチコ より:

      星先生
      ありがとうございます!
      在学中、水彩画の授業の批評の時間、星先生は毎回じっくり丁寧に生徒一人ひとりの絵を見てくださりAをもらった時はとても嬉しかったのを思い出します。

      セツでは水彩絵具を使っていたのは1年ほどで、その後はアクリル絵具で描いていました。数年前、ターナーの水彩画の原画を何枚か観る機会があり、水彩画をまた描きたいと思いました。最近、以前より水彩画の面白さをとても感じられるようになりました。

      角田君のお店には是非行きたいと思っています。
      先生にまたお会いできたら嬉しいです。

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