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美しさを求める眼力

元明健二(リメナスコーヒー 社長)
1987年~2009年在籍

トリイツカサキノさんからバトン受けました。セツ校長の直接の指導を受けた幸せな世代でした。セツは絵を描く希望を叶えてくれた特別な場所。芸術活動は団体ではなく個で行うものとして、教え子、特にゲリラへのセツ校長の期待があった。

学生の度を越した行動に愛を持って怒るセツ校長も目撃したが、常に紳士であった。それにしても怒られている当人より周りの方が素直に聞いていた。

生き方の基準のひとつに美味しいものは体に良い、その感覚を生徒達に卒業式に手作りの料理として振舞い、造られた世界を否定する世界観を体をもって示し導く深い姿勢。

線画とマッスの世界。視覚認識した脳に浮かぶ複雑なイメージと脳の興奮を必然という結果として表現するアート。人間が感じ取れる美的感覚を余すところなく、平等に、しかし自分に近い感覚を持つ者には優先的に与える、ちょっと人間的なセツ校長。生徒の中にはセツ校長の世界に近づきたいという気にさせる話術と行動、それがまた生徒の心を魅了する人間性。

アート展のギャラリーで展示する絵の並べる順番はセツ校長の指示で進められた。壁面に直感的に、個々が響き合い最も色の美しさを感じとれるように。作家の個性を引き立てるプレゼンテーションは素晴らしくセツ校長が絵の並びを修整するたびにため息の出る展示会場となった。完成までのショーのような自由な過程がとても勉強になった。

自分の感覚を次のステージに上げる為には問題意識と経験が必要な事が当たり前としてあり、掬い上げる眼力の鋭さでセツ校長は容赦なかったし、助けられた生徒たちが数多くいた。

コーヒーが好きだったセツ校長に焙煎したコーヒーを飲んでもらいたかった後悔があるが、現在の仕事のコーヒーや香料のクリエーションは脳の中の情報処理がアートも同じなので、いつもセツ校長がいる。

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  1. トリイツカサキノ より:

    素敵なコラムありがとうございます!
    私も、絵はもちろん、ライフスタイルや思想にも大きな影響を受けました。
    セツを経て、紅茶党からコーヒー党へかわりました。お料理やおもてなしが苦にならないのもセツ先生の影響かな?
    ロビーで食べたお餅の美味しさ、いまでも忘れられません。

    • 元明(がんみょう)健二 より:

      トリイツカさん
      つき立て餅に合わせた納豆が餅を引き立ててる驚き思い出します。色の響き合いと同じですね。
      おもてなしが好きとの事、ゲストに対する作家のプレゼンテーションの仕方もセツ校長直伝ですね。
      年末の最後の夜間の休憩時間に学生がホッと出来るようハンドメイドのフルーツケーキ差し入れしてました。それもおもてなしでした。
      言葉を介さない気持ちのやりとり、そんな事も大事ですね。

  2. 星信郎 より:

    元明君 こんにちは

    おやおやびっくり‼︎ いまコーヒー社長ですか。でも、なるほど!の感じもします。元明君とコーヒー、いろいろ思い出あります。

    房総大原漁港でのセツ写生会では、6月の雨を逃れ海辺の物置き小屋で元明君と二人で写生をしたことがありました。そのとき元明君はマジシャンのような早わざで、ガスボンベで湯を沸かし、ドリップコーヒーを淹れていました。それはそれは美味しかった。

    セツ・カフェのコーヒーポット、同じものが僕も欲しくて、元明君にお願いして手に入れたオタカラ、いまも現役です。

  3. 元明(がんみょう)健二 より:

    星先生と大原で飲んだコーヒーは美味しかったですね。外ではコーヒーの香りが輝いてました。
    ポットは私の愛用品をお譲りしました。大事にしていただきありがとうございます。蝶番付き無いかな?という星先生がコーヒー淹れる準備しながら聞いてきた会話が懐かしいです。蝶番付きのポットは作る手間がかかるためか、今では見なくなりました。熱くなった蓋をそこ此処に置かなくて便利なんですよ。星先生の道具のこだわりいいですね。
    今とてもセツの皆んなにコーヒー淹れてあげたくなりまた。休憩中の先生たちや事務所、学生の笑顔のために。

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