第2話 ええっ?! 裸体モデル?!
セツへの興味を徐々に深めていた日々だったが、関係者でもないのに学校のプログラムを体験したり隅々まで見学させてもらったり、生徒さんと議論したりできるのか?(当時は、「生徒になる!」という選択肢があるなんて夢にも思っていなかった)
ある日、とうとうスガやんにそんな事を聞いてみると…
「だったら、裸体モデルやったら?今、セツで裸体の男性モデル探してたと思うよ!」とスガやんは「ちょっとそこまで」みたいに、えらく軽く言うのだった。
は…。
「はい?!」
ら、裸体モデル…?!
「まるちゃんだったら先生に気に入られるかもしれないよ」と、あくまで軽くスガやんは言う。
はえーーー!?
それを聞いた時、すごくビックリしてしまったのだった。
実はその時まで、その、今の今までの人生通してずうっと、子供の時からずうーっとカリッカリに痩せてるのが気になっていたし凄いコンプレックスだったし、男子たるもの!みたいにがっつりスタミナ全面押し出しが良しとされるような世の中に押し流されそうになっても「仕方ない、こういう人間なんだもの!」って、弱いなりになんとか無理くり折り合いをつけてやってきていたのだ。
それをそんな、「気に入られるかも」って急に言われてもねえ?
全然自慢できる事じゃない、体力勝負のTHE! 男だぜ! みたいな人たちとは絶対、まったく馴染めない自分。身長172センチなのに体重は軽々と50キロしかない。
「あのさ…裸体モデルって、筋肉!みたいな人でないとダメなんじゃないの? 私はこんなカリッカリだけど?」
それを聞いてスガやんは「セツ先生はカリッカリに痩せているのがいい! 弱いのが美しい! って言うよ」
その言葉を聞いた時、頭の中にあった霧がサーッと晴れた気がした。そしてすんなりと「あ。行ってみよ!」と思ったのだ。
裸になるのはなんの苦もなかった。だいたい、そんな事を良いって言ってくれる人は人生のその時まで、1人も居なかったのだから。
「それが良い!」って言う人がやってる学校かあ…。
そっかあ。私は私だもの。そっか。
行ってみよ!
それからすぐに行動した。セツの授業時間の終わる頃あたりに、初めてセツの校舎に入った。ロビーで待っていると、デッサンを終えたセツ先生がスタスタ上から降りてきた。
スガやんがセツ先生に「あ、モデルやりたいマルヤマさんです」と声を掛けてくれた。「あ、そう」上から下までジーロジーロと鋭い視線。うわー。視線がビームみたい。むむむ…?
「ごーかく!!」
それはほんの30秒くらいの事だった。
うわあ…! なんとまぁ。「ごーかく」してしまった。けっこうスゴい人も合格しないって聞いていたけどそんなアッサリ…いいのかな?
ともあれ目出度くも「ごーかく!!」が出たので、お店の合間にモデルのバイトに行く生活が始まったのであった。
(つづく)