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夏のテラス

三原誠(木工家)
1996年~2005?年在籍

後々になってわかったことですが僕がセツ先生のデッサンを目にしたのは18歳のときでした。
 当時、美大予備校で勉強中の浪人2年目。
 スランプで絵が描けず悩んでいて書店でセツ先生の本を手に取り立ち読みして、こんなふうに描けたらなと思っていました。
 その後美大に進み、その本のことはすっかり忘れ、卒業しても就職もせず、造形作家になりたい、と漠然と作品を作りながらの不毛なバイト生活。
 そんな頃、遊びに行ったナイトクラブでセツモードセミナーの生徒達と知り合い、セツ先生のことやセツモードセミナーの話を聞きました。
 その後 絵を描きたい と、なんとなく思い始め、ふとセツモードセミナーのことを思い出し午後部に入学。
 そしてセツ先生との初の対面。
 僕は すごい人であることなど、先生の経歴も何も知らずの初対面だったので (クラブで知り合った友達は、面白いおじいちゃんだよ。としか言ってなかったので。)かなりビックリしました、こんな人がいたんだ! と。
 突然近寄ってきて耳を引っ張ってきたり。
 「事務所から鉛筆持ってきてくれ。」
 と言われたり、話しかけられるのが嬉しくてすっかり夢中に絵を描く日々。
 ある時セツ先生の背後からこっそりデッサンが描かれるのを見ていて ああ、あの時本屋でみたのはセツ先生の絵だったんだ。 
 と、思い出しました。
 そんな毎日の中いつも感じていたのはセツ先生の人間味でした。
 デッサンの授業中に、なにげなく「のびのびと描きなさい。」とか「モデルの周りをまわって美しいフォルムを探しなさい。」など いつも、声をかけてくれるタイミングがとても絶妙で、まるで教室の空気がみえているようで不思議な気持ちになっていました。 
 思い出深いのは、僕が友達の誕生日にと八百屋でスイカを買っていってプレゼントした時。
 セツ先生が近くにいて
 「おい、上で切ってきなさい。」とおっしゃり「さあ、この人がこの人にプレゼントしたスイカだよ、みんな食べなさい。」と、みんなに配ってセツ先生と並んで共にかぶりついたことです。
 いつもさりげないのだけど、存在感は大きく、嫌味がまったく無くてなんかお洒落。
 絶対に同じようにはなれないとわかっていてもいつもあんな風になりたいと思わせる、本当に不思議な方でした。
 今でも思い出そうと思えば一緒にデッサンをしていた情景や言葉などがいつでもリアルに思い出せることもとても不思議です。

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  1. 平山 より:

    涙でそう

    なんで

    わからない

    嬉しいのか 懐かしいのか 尊いのか

    • 三原 より:

      平山くん ご無沙汰しています。
      俳優で活躍しているみたいで何よりです。
      映画楽しみにしています。

  2. 星信郎 より:

    三原君 こんにちは

    暑いですね、暑い暑い、しっかりと汗かいてのスイカが美味しい。友人の誕生プレゼントにスイカとはマコトに三原君らしい。
    それを見ていたセツ先生、これは何ともオセツかいな! お茶目にちゃっかりと指図をしながら、うまうまとスイカをせしめてしまう。とっても可笑しくて上品な話です。

    久しぶりに観る三原君のドローイング、流石ですね〜、シンプルに美しい。ただしセツ先生の横の人!すこしハンサムすぎないか? ホシ 

    • 三原 より:

      星先生、コメントありがとうございます。
      セツでの思い出は沢山ありすぎます。
      今もすべてに生かされてます。
      笑 ドローイングたしかに美化しすぎました、5割増しですかね。笑笑

  3. 吉沢真 より:

    ボクは三原君の友人です。
    本日、三原君は遠いところに旅立ちましたのでお知らせします。
    享年51歳。
    誠君が未だ愛してやまないセツ・・・。
    何度もボクのところに来て「こんなの書いたけど、これでどうかな?」って尋ねてきました。
    偶然に、こんなところに掲載を見つけました。
    亡骸の脇にセツ時代のアルバムが置いてありました。
    今頃、先生のお近くで、また楽しい時間を過ごしながら描いているかなあ。
    「やさしく美しく」逝った彼は、セツ先生の美学を全うしたと信じています。
    三原誠の冥福を、どうぞ祈ってやってください。  (2021年11月28日 安曇野市友人 吉沢 記)

  4. サクラチエ より:

    誠君とは同級生で
    手に自分で彫ったイルカの刺青があって
    いるかちゃんてよんでいました。
    いつも穏やかで優しい笑顔で笑っている人でした。
    ご冥福をお祈りします

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