
写真と文章
カメラのフォーカス 前田 奈緒美(長崎市片淵)
一昨年閉館した長崎市公会堂の緞帳には 江戸時代の長崎で南蛮人が闊歩する様が巨大な刺繍によって描かれていました。幼少の私は 昔の長崎中に大きな提灯ブルマー姿の外国人が大勢いた と思い込んでいたものです。「鎖国」や「出島」について知るのは もう少し後のこと。実は 外国人たちは 出島に閉じ込められ 随分と窮屈な思いをしていたようです。当時は日本にたどり着くだけでも 命がけだったはず。復元された出島の建築物を見て 勝手に優雅な暮らしを想像していましたが 彼らからしたら 不便きわまりない外国での暮らしだったのかもしれません。
明治の時代になると鎖国が終わり 出島はその役割を終え 埋め立てられました。そして今 遺跡発掘しながら 出島を蘇らせる作業が続いています。かつてあった出島の輪郭が 次第に浮かび上がります。昨年130年ぶりに出島に橋が架けられました。「橋を渡る=時が繋がる」 遠い昔だと思っていた時代の出来事が ぐっと身近に思えます。今日も 過去と現在を行ったり来たりの人が絶えない「出島表門橋」なのです。