
さつえいしたひと
春には電車と桜を撮りたい楠本哲義さん(長崎市矢の平町在住)
長崎の街は 平地が少ない。その少ない平地を縫うように路面電車の線路が走る。悪天候にも強く 主要な施設 観光スポットなどには 電車だけで行くことができる上 どこまで乗っても120円の運賃。市民になくてはならない足です。2月の撮影会では 工業デザイナー・水戸岡鋭治が手がけた『310号みなと』を貸切。ステンドグラス越しで観る長崎の街は格別でした。夏には『ビール電車』 冬には『おでん電車』と 粋な車両を走らせてくれ 市民ゴコロは くすぐられっ放しです。『みなと』は ぴっかぴかの車両ですが 実は昭和29年製の64歳。他にも長く使い続けられている電車たちが活躍中。各地の都市を走っていた路面電車を譲り受けたものも数多く 一台いちだい 大切に運行されています。戦後の復興も 電車と共にありました。原爆で焼け野原になったこの街で電車が少しずつ走りはじめることが 人びとの心持ちも明るいほうへ運んでくれたのだろうと想像します。早朝や深夜の静かな時間帯は 高台の電車が見えないところを歩いていても 電車の走る音が響いてきます。心地よい長崎の日常の音に耳にしながら 今日もいつもの電停を目指します。