第七話 いざ竹林!

むこうの斜面に生える竹

むこうの斜面に生える竹

晩秋のある日、山へ竹伐りに出掛けました。普段、竹は業者さんが油抜きという処理を施した晒竹(サラシダケ、あるいは白竹)と呼ばれる象牙色の竹を仕入れて使っていますが、今回はご縁があって、山から青竹を伐らせていただく機会を得ました。東京から車で約2時間、鹿も猿も熊も居る山中の現場に到着。東京から移り住まれたという竹林の持ち主にご挨拶をして、早速、竹を見せていただきます。かなりの急斜面ですが、太いマダケが沢山。

竹林の外側では陽光が当たりすぎ、竹の肌が黄色っぽくなります。かといって生育密度が高くて陽が当たらないのも困りもの。 青々とした太い竹が育つ条件は、なかなか厳しいものです。手分けしてよい竹を探します。

左から 傷のない綺麗なマダケ/かわった形の竹は花入れなどに/実竹(ジッチク)と呼ばれる肉厚の竹/竹林に残る苔むした切り株

左から 傷のない綺麗なマダケ/かわった形の竹は花入れなどに/実竹(ジッチク)と呼ばれる肉厚の竹/竹林に残る苔むした切り株

竹同じ竹林でも生えている姿はさまざま。探索すると、規格外の竹がいろいろと見つかります。実竹は竹の地下茎が地上に出てきて竹となったものと言われ、肉厚で「樋(ヒ)」と呼ばれる溝が深く、茶杓削りに珍重される素材です。残された古い切り株の枯れ寂びた風情と苔の青み、黒く溜まった水それぞれの対比もまた美しいですね。ただし夏場の竹林は蚊の天国になりますので要注意。

竹は高さ10メートルほどもあり、中空とはいえ水分を含んでいますので、見た目に比べてずっしり重い。まして急斜面での慣れぬ作業、男3人で悪戦苦闘しながら竹を伐り、運び出しました。ふだん使っている材料も、見知らぬ伐り子の方がこうして(おそらくは、ずっと手際よい技で)伐り出し、その後の製竹を経て運ばれてきているわけで、手元に届くまでにはさまざまな方の手が掛かっていることが実感されます。

山間の日はみじかく、作業を終えるともう夕暮れ間近です。山暮らしの庭先で育てられたホオズキの実は、口に含むと甘く酸っぱく、そして少し切ないような味がしました。

山間の日はみじかく、作業を終えるともう夕暮れ間近です。

 

 

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