静かな森のアトリエで、海の向こうの香りのアートに触れる studio A&Rt(ストゥディオ アルト)

奥様の作品

 深い森をくぐるように車を進めると、作家の家があった。ここは彫刻家・阿部素尚さんと、ジュエリー作家・阿部かおりさんご夫婦の自宅兼アトリエ。道に迷って少し遅れてしまった私たちを、阿部さんは「こんにちは」とやさしい眼差しで迎え入れてくれた。

 日本ではない、どこか外の国の匂いがするアトリエ。「この辺はね、外から来た人が多いんですよ。私は生まれが東京でイタリアにいた時もあってね、流れ流れてここに」奥様の作品もまた、日本ではなかなか見かけることのないイタリアの伝統技術INCISIONE(洋彫り)を使用したジュエリーだ。繊細な細工。経験したことはやはりその人に宿って行く。阿部さんの絵画、そして、奥様の繊細なアクセサリーの数々・・・しばし海の向こうに思いを巡らせた。

 

作家の描いた絵画

 このギャラリーは週に数日、絵画/木彫を教えるアートスクールへとカタチを変える。地元の子供から大人まで、生徒さんはさまざま。作家として作品を作り、発表し、教える。さぞかし大変でしょうと話すと、「いや、いろいろな刺激がありますよ」と笑顔。阿部さんは、紳士的で物腰がとても柔らかい。それとは裏腹に、時にワハっと笑う顔が何ともチャーミングで、なぜかセクシーだ。どんな彫刻を作っているのだろう?「小さいものでよければ作品の一部が庭にありますよ」と案内してくれた。庭の草木の中に作品はあった。有機的な形。呼吸しているかのような。あると言うよりも「居る」と言うのに近いだろうか。庭には可愛いゲストが二匹。愛するウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアの「アンジェロ」とケアーン・テリアの「レジーナ」だ。阿部さんの表情がくちゃくちゃっと緩む。

 

  • 作品
  • 庭の作品
  • 波の作品
  • 作家と犬

 その日は近くのギャラリーで大きな作品を見ることができた。扉を開けてすぐ、圧倒された。波。荒々しい波ではなく、繰り返される滑らかで穏やかな波。阿部さんの眼差しや、紳士的な言葉の印象と同じ。横から、斜めから、作品を眺める。二階へ上がり真上から作品を見ると、印象は一変する。穏やかだった波は大きな塊となり渦を巻く、深く深く底へと流れる。底は果ての果て深海を想像させる。小さい波はゆっくりと重なって、大きく変化する。立体が生み出す光と影。柔らかな印象だけでは語れない部分。阿部さんの中に、深海があるのだ。「これからもきっと、作品を作り続けていくんだと思います」繰り返す波のように日々石を削る、そのひと彫りはどんどん重なってやがて大きな波となり、見た人の心に押し寄せるのだろう。

 


波の作品全体

studio A&Rt(ストゥディオ アルト) profile

〒325-0114
栃木県那須塩原市戸田120-232
TEL 0287-68-1141
OPEN galleria Angelo:土・日曜日 13:00~17:00

 HP http://www.art-angelo.com/


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