自然と生命の神秘、その普遍的な美を希求する陶芸家 ダグラス・ブラックさん

外観

「偶然見つけた一滴の深い青に、僕は宇宙を想像した」


展覧会のDMと一緒に届いた、自己紹介文にその一行があった。ダグラスさんの作品の特徴であるドット柄からは、確かに宇宙を想像させられる。無限、光、そして闇・・・。


内観

ダグラスさんはアメリカのカンザス州に生まれ、大学で芸術を学んだ。最初にデザインを学び、ガラス、木、土と、たくさんの素材に触れた。はじめはガラスの作品をつくっていたが、気がつくと日々土に触れていたという。1990年に来日し、その2年後、栃木県茂木町に窯を持った。そして、もう20年以上、日本で作品をつくり続けている。さまざまな土を試し、今は信楽の黒土を使って制作している。展示会の時などは、数種類の土をブレンドしオリジナルの色をつくり出す。年内には、自宅に隣接したギャラリーをオープンする予定だ。


完成前のギャラリーにお邪魔させていただく。庭先から階段を上がり、見晴しのよい屋上がギャラリーの入り口。素晴らしい景色だ。太陽と青い空、眼下には悠々と川が流れ、風が強く吹き抜け、森の香りを運んで来る。中に入ると、暖かな日差しに囲まれた作品たちが、ゆったりと座っている。


「なぜ、陶芸の道を選んだのですか? どんな想いを、作品に込めているのですか」という問いに


にこぐさ外観

「土は、私の投げかけるすべてを受け止めてくれます。そして、私を癒し、私たちの周りにはいつも、目に見えないエネルギーが溢れていることを気づかせてくれるのです。やわらかな心でありのままを受け止め、その感動、美しいもの、目には見えないキラキラと輝くものを土に投影します。いつの日かそれは私に還り、作品が私をつくってくれます」


そう答えてくれたダグラスさん。人間と自然は生き、同時に生かされているということを改めて思い知らされる。しかし、それは忙しく暮らす日々の中で、つい忘れてしまいがちだ。人間が王様であるかのように勘違いしてしまう。心で土に触れ、対話している作家の言葉に、胸が熱くなる。


自己紹介文の続きに、「僕たちは宇宙と同じ。可能性は無限にあり、境界も限界もない。それぞれが神秘的で、たった一つの存在。ただそこに存在しているだけで美しい、夜空に光る星。僕たち一人一人がPolka Dot Skies・水玉宇宙になった」と綴られている。


作品に落とされた偶然の一滴は、もしかすると、神様がダグラスさんに贈ったメッセージなのかもしれない。どんなメッセージなのかは、ダグラスさんにしか解けない謎だ。その謎の答えは、作品を通して私たちに語られる。

櫻岡さんの作品

だぐらす・ブラック profile

1967年 カンザス州ローレンスに生まれる
1990年 オハイオ州コロンバス芸術大学(CCAD)卒業。日本 政府より“Artist Visa”を授与され、陶芸を学ぶために来日
1992年 栃木県芳賀郡茂木町にて築窯

 HP http://sites.google.com/site/douglasblackart/home/



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