ノイ・フランク アトリエ那須 外観

ノイ・フランク アトリエ那須

ノイ・フランク ショーケース那須インターから車で10分、那須高原大橋を渡り、いくつかのお店が並ぶ街道沿い。

 

はじめての人ならまず一度は通り過ぎるという、小さな看板が示す小道を少し入ったところに「ノイ・フランク アトリエ那須」の看板がかかった白い建物がある。ドアを開けると、小ぢんまりしたショーケースの中のさまざまな形のハムやソーセージが目に入る。奥には木の床と木のテーブル、アップライトピアノが置いてあり、個人宅のようなアットホームな空間。庭には石の小路が造られ、色々な種類の植物が植えられ、錆びた鉄のドームや、不思議な卵型のペンギンのような小さなオブジェが置いてある。そういえば室内の壁やピアノの上にも、石の彫刻やワイヤーアート、鉄製の壁掛けや極彩色の抽象画が掛けられていた。

 

ノイ・フランク 庭のオブジェご主人の小出英夫さんは、元々は造形アーティスト。東京で作家活動をしていたが、姉の経営するノイ・フランク(国立市)を手伝ううちにハムづくりを覚え、3年前にこちらに移って本格的にお店を始めたのだそう。

ノイはドイツ語で「新しい」。“新しいソーセージ”という元々引き継いだお店の名前に、この土地ならではの特色を出し、作家活動も続けるべく“アトリエ那須”と添えた。やればやるほど大変になることがわかっていても、こだわらずにいられないのはアーティストの性分なのか、素材から調味料の配合、製法に至るまで、どこまでも手間暇をかけて作られたソーセージ。 一口食べれば、わざわざこの味を求めてやってくる人がいるのも頷ける。


ベーコンは今まで食べた中で間違いなく一番の薄味、なのに満足感がある。脂身は半透明。低温でふわっと溶けて、全然臭みがなく、肉の甘みが広がる。白っぽくベタッとした脂とは全く異なるものだ。地元の化学肥料を使わない循環型の農業を指導する「アジア学院」で、お米やおからを食べて育った健やかな「あじっこ豚」のハムは、すぐに売り切れてしまう。


手づくりソーセージ試食風景ペッパーサラミは、黒・白・グリーンの3種類のペッパーがホールで入っていてカリッとした歯ごたえを感じた瞬間、鼻に抜ける胡椒独特の香り。プチポトフと名のついたソーセージは、オレガノ・バジル・クミン・・・など何種類ものスパイスが閉じ込められ、煮込みに使えばスパイス要らず。ほとんど白に近い薄桃色のバイスブルストはクリーミィで、ふわふわで、テリーヌのような食感。これが置いてある店は珍しいらしく、近隣のドイツ人も買い求めに来るそうだ。ビーフジャーキーもかつて食べたことがないほど柔らかく、噛むほどにジューシー。どの商品も、塩分や添加物を限りなく抑えているので、優しくてサラッと食べられる。けれど特徴がしっかりと出ていて、薄味でも満足の行く完成度の高さ。ソーセージ作りは、肉と会話しながらでないとダメで、肉の状態はもちろん、その日の気候や自分の体調にもよる。また、ここ那須高原も、ソーセージ作りに適しているのだそう。あまりに湿度が高くベタベタしていると、低温で溶ける「あじっこ豚」の脂はすぐトロトロになってしまう。いい塩梅で固まるには、この気候が最適。

 

そんなふうに手探りで研究を重ね、ようやっと軌道に乗り出したときに、東日本大震災に見舞われた。以来、しばらくの間、客もぱったり途絶え一時はどうなることかと思ったが、近頃また客足が戻りつつあるという。さらに、最近は道の駅やサービスエリアでも、地産地消のものを取り上げるところが増えてきている。一度この味の虜になったら、確実にリピーターになるだろう。明らかに塩分も脂の質も違うからだ。「うちのライバルは、大手です」と小出さんは言う。意外にも小さなてづくりのソーセージ屋は、周辺ではこちらだけなのだとか。

 

試行錯誤を繰り返しながら、渾身の力をこめた製作過程は、ご自身が作品に向き合う姿勢にも似ているのだろうか、そう聞くと「どうでしょうね」と小出さんは笑う。「食べものだからね。作品と違って、あんまりはみ出たことはできないですよ。人の口に入るものだから。最低限の本店の製法を守ることはしなくちゃいけない。ただ言えるのは、本当に出来る限りはどこまでもこだわって、少しでもいいものを作るということです」やはり、アーティスト気質なのだ。


あじっこ豚の解説をしてくれる小出さん

ノイ・フランク アトリエ那須 profile

〒325-0101
栃木県那須塩原市西岩崎233-57グリーンランド内

TEL 0287-74-6255
OPEN 店頭販売:10:00~18:00
レストラン:11:00~20:00 水・木曜休

 HP http://nasu.artscene.jp/



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