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モクセツ先生

升ノ内朝子(イラストレーター)
1999年~2001年在籍

私はセツ先生ご存命の年の最後の生徒の一人で、残念ながらあまり直接お話ししたりする機会はありませんでした。できることなら私も他の皆さんのように耳をつねられたり、愉快な言葉の一つも投げかけられたかった。しかし悲しいかな、私のセツ先生との想い出は、あの「モクサツ」という切ない4文字です。

セツにはデッサンと水彩の時間があって、私は殊ににこの水彩の授業が苦手でした。決められた時間(2時間だったかな?)内にB2の画用紙に描く。もともとちまちましたものを時間をかけて作ったり描いたりするのが好きだった私にとって、これはまさしく苦行でした。今思えば褒められたいがために、いわゆる「セツ風」というやつに近づこうと闇雲にもがいていました。しかし苦労の末の合評では、気になる絵にしか触れないセツ先生をはじめ諸先生方から鮮やかな「モ・ク・サ・ツ」を軒並み頂いて、何度も心折れました。

そんなしょっぱい想い出でいっぱいなのですが、セツは私の人生に関わる素敵な出会いを沢山くれました。セツの友人の勧めで渡英し留学。そこで私は思う存分ちまちましたものを作り、晴れてイラストレーターとしてデビューすることができました。人生の伴侶ともそこで出会いました。今はこの伴侶の故郷であるギリシャで暮らしていますが、毎年帰国して、セツの同級生とグループ展示をしています。
 「モクサツ」は辛かったけど、あそこで諦めなくて本当に良かった。セツ先生のように自由で、大胆で、直感的な描き方に憧れを抱き続けつつ、今日も私はギリシャの風景をちまちまと描いています。

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  1. 星信郎 より:

    升の内朝子さん こんにちは。

    セツ先生がギリシャの港町で乗馬で散歩とは、意外にとんで面白いですね、これが自転車では普通すぎますものね。ギリシャの紺碧海原と鮮明な港の色のバランスが絶妙にマッチして、まさしく天国のような静けさもあります。

    升の内さんとギリシヤの関係謎がやっと解けましたよ、人生どう進むかまったく分かんないものですね、、、やること国際的だ。
    あのころは姦しかった? あなたも、Kさんも、Mさんも、Tさんも、いまはそれぞれ淑やかに? 皆さんお元気で何よりに思いますよ。

    通称セツ風、と言ってた水彩画はフォーヴリスムの流れでね、あれは3時間で仕上げる写生習作だったから色と構図だけを重んじていたと思います。 あの時間Aだった人はイラストレーターになれないという評判すらよく聞きました。
    セツ先生も本当は、稚拙でもナイーブに丁寧に描いた絵のほうが好きだったようですよ、自分には無いものねだりでしようかね?

    また3人展でお会いできるのをを楽しみにしてます。星

    • 升ノ内朝子 より:

      星先生、コメントありがとうございます。

      「イラストレーターになりたかったらセツへ行け」という噂を聞いて私はセツへ入学したのですが、「Aだった人はイラストレーターになれない」という評判があったとはなんともおかしな話ですね。でもやっぱりあの場でAをバンバンとっていた人は今でも憧れますよ〜。単純にかっこいいじゃないですか。
      私は未だにセツ・コンプレックスが心の片隅にくすぶっていて、今回の絵も星先生に見られる〜〜と思ったら必要以上にちまちま描いてしまいました(笑)
      描く内容も迷いに迷って、遂にはセツ先生をギリシャへお招きしてしまいました。そう、最後のイメージである自転車でのお姿を乗馬姿に変えて…実際はセツ先生がロバにまたがるなんて考えられないですけどね。

      それにしても星先生!当時姦しかったのは認めざるをえませんが、「今はそれぞれ淑やかに?」って、もっと自信を持って言い切ってくださいよ!クエスチョンマークはいりません(笑)

      私もまたグループ展でお会いできるのを楽しみにしております。毎年お越し下さってありがとうございます。初心を忘れず、今後ももっともっと素敵な絵が描けるよう邁進していきたいと思います。

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