四国、愛媛、内子という町

私は四国、愛媛、内子(うちこ)という町に拠点を置いている工務店で働いています。

高齢者率が4割近く、若者は出て行ってしまい、山はあるけど放置林が問題になって、土砂崩れで毎年いろんな山の土留め工事が行われる、そんなどこにでもある山間の町です。
ありがたいことに私たちが暮らす内子町やその近隣の久万高原町、西予市などは林業が盛んで、四国山地で育った木材の木目はとても美しく、節のないきれいな材料を使った家をたくさん建てることが出来ています。

山の方々は何世代もわたり、何十年もの間手塩に掛けて木々を育ててくれていますが、皆さんご存知の通り林業を取り巻く環境は厳しいものです。

このあたりの問題提起はよければこちらをご参照ください。
https://note.com/okyayama/n/nf46aa4ee16e9
(内子で地域おこし協力隊として活動している岡山君のnoteです)

田舎の過疎化→放置林の増加→土砂災害の増加
と、小さな地域の問題があらゆるところで起こって日本全体の問題になっています。
ということは裏を返せば小さなコミュニティが変わっていくことで、大きな日本全体が変わる可能性があるかもしれません。

内子というのは人口約16000人の街ですが、内子町役場から30分も車で走れば、いろんな道があっていろんな集落に行けます。
どの山にもいろんなひとが住んでいて、小田地区には岡山君がいて日本各地から10人近く20代の若者を町に招き入れ、廃校寸前の小田高校では生徒が主体となって町内外から生徒を増やすために積極的に活動をしたり、御祓地区に行けば水谷さんが廃校になった小学校の校舎で地元の人たちとランチを提供していたり、ほかにも自分たちの里山を守る活動をされているひとたちがいます。

石畳地区の武藤さんは、関東から内子に移住してきて、この春、パンを焼く石窯をご自身でつくりあげました。

昨年行われたクラウドファンディングより↓
https://readyfor.jp/projects/ishidataminopanya

石畳地区は特に美しい里山が残っている地域で、町外からもたくさんの方が訪れ、何度も再訪したいと思わせてくれる集落です。
栗の栽培が盛んで、茶道に使うような炭をつくる炭焼き職人さんもいます。
パンを焼けば焼くほど、薪を使います。
その薪は地域の山の放置されたくぬぎの木で。
地域が循環して、里山を守ることに繋がっています。

美しい里山を残したいと活動したり、古い町並みや芝居小屋を残す活動をしたり、ただの駐車場にわざわざ木を植えたり、道の駅に林のような訪れる人が楽しむことができる空間をつくったり、先人がそういう風に美意識をもったまちづくりをしてくれたお陰で、今も内子の街にはたくさん観光客が来てくれています。
ていねいにつくられたものは美しく、気付かないほどにその場所に調和します。
美しいものにひとは惹かれ、愛着を持ち、その家や土地に留まるのではないかと思います。
日本を代表する木造建築家である故・吉田桂二先生が設計してくれた図書館や中学校、宿もこの地に馴染み、美しく佇んでいます。

「お気に入りの風景の中にいたい」
「お気に入りの風景を今のまま、保ちたい」
誰かのお気に入りは共感を呼び、人を呼ぶのだと思います。
田舎でも都会でも、木育の根源ってそんな気持ちなのではないでしょうか。
そんな小さな循環がもっと広がって大きな流れになったらいいなと思いながら、今日も明日も大工さんと木の家づくりの仕事をしている訳です。

 

西渕工務店 西渕

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