石川県編 その三

金沢市のとある通りに、「ことのは不動産」という文字が書かれたウインドウ。その前を通るたびに、ここは何だろうと思っていました。小さなスペースにアンティークテーブルと椅子が二脚。木の本棚にはインテリア関係の本が並び、不動産と書いてあっても、物件情報のチラシが貼ってあるわけでも、たばこ臭い背広のおじさんが不愛想に座っているわけでもありません。この不動産屋らしからぬ不動産屋を運営するのは松本有未さん。ショートカットと大きな目が印象的な元気な方。はてさてなぜ不動産屋さんにおなりになったのでしょうか。

「芸術系の財団とか雑誌の編集社などの職種についたのですが、もともとインテリアとか暮らしに興味があって東京R不動産というサイトをよく見ていたのです。綺麗にリノベーションされた物件だけではなく、古くてもアイディアよく使えば、オフィスやアトリエ、店舗にもなりうるちょっと擽られる物件を扱っていて」同じコンセプトの会社が金沢にもできると知って飛び込んだ。会社で必要に迫られ「宅地建物取引士」の免許を取得。不動産屋さんをやろうかな、と思ったのは30歳をこえて、これからどうしようか、と考えだした頃。「いまやれば、失敗してもやりなおしがきく」と、思い切って4年間務めた会社を辞め独立することに。

ことのは不動産ことのは不動産ことのは不動産

それから5年。少しずつ仕事が軌道に乗りはじめている。松本さんは、「物件の状態や街並みや立地などを見て何ができるかを考えるんです」ただ単に家を売ったり貸したり、ではなくて物件をどのように生かせるか、という提案をしたい。例えば町家が古くなってきたので壊そうか、と相談を受けたら「シェアオフィスや、少ない資金で事業を起こしたい人向けの店舗、女性が暮らしながら仕事をするためのスペース」などのアイディアを貸主に提案し、イメージを膨らませてもらう。実際それが現実のものとなり、改装し貸し出したところ、あっという間に借りてが決まることも。

もうすぐウエブサイトで公開する集合アパートもユニークだ。なんとリフォームは借りる人のDIYでどうぞ、その費用の一定額は大家さんが持ちますよ、というのもの。賃貸物件でありながら自分次第にリノベーションできるのが魅力。「このアイディアは一つの賭け、でも自信はある」と松本さん。

家を売りたい人と、物件を探している人のマッチングの際の面白いエピソードも伺った。「売主さんと買主さんの雰囲気が何故か似ているんですよ」え?そうなんですか!と興味津々。家は住む人の人柄を如実に表すのだそう。「住まい方を共感するから取引が成立するのですね」と松本さん。

松本さんの夢は「村」を作ること。「おひとりさま」を選択する人たちが安心して住まえる「家」とコミュニティとしての「村」の提案。一戸一戸は独立した家。しかし孤立ではなく「寄りあえる」場所もある理想の「村」、そのために少ない費用で家を建てて一人でも暮らしていける、その実践を自分自身でやってみたい、それをモデルにしてくれたら、一人で家を建てることをあきらめずに済む。今そのための土地を探しているとか。「大きなことではなくて、今の自分ができるささやかでも確かなこと」をこつこと積み重ねていく。そんな不動産屋さんがあって、嬉しい。私は松本さんの考えに大いに共感し、ずっと応援をしていきたいと思うのでした。