vol.1農業と陶芸

私の主な生活は「農業」と「陶芸」。土と季節を感じながら過ごしています。
 

「農業」といっても家族単位の本当に小さな農業です。農業は、段取り作業が永遠と続きます。黙々と畦の草刈を進めたり、淡々と収穫をして茎や根を切り選別したり…。それぞれの成長過程に無駄なものはなく、土作りから施肥、収穫後の殻や茎、根など、土に還しては、また肥やしになって…と、できる限り、じゅんぐりに循環させているのです。「ふーっ」と、一息ついたとき、それまでの作業が必ず進んでいるという、この満足感がとても心地いいのです。
 

メインの作物は、先祖代々から続く「米」と父が始めた「にんにく」。主食でもある「米」は、身近な人達が健康でいられるようにとの願いを込めて。また「にんにく」は、さらに元気でいられるように…作物にも、じゅんぐりじゅんぐり、種撒き〜収穫まで途切れることのない連鎖があり、「作り続けることの大切さ」を感じます。そして、私の代で新たに始めたのが、大好きな「ゴマ」。買うのもいいけれど「自分で育てて食べたいな!」と挑戦してみました。成長を見続ける事が楽しみ。今年の秋の「ゴマ」の実りを心待ちにしています。
 

農業の合間の楽しみが「陶芸」。これまた「土」触り。農業と同じく、黙々と作品づくりに取り組んでいる時、工程の一つ一つが着実に進んでいることに、ふと気が付くのです。陶芸の醍醐味、喜びは、一粒の種・ひとつの土の塊が時を経て実になり、器になり…食卓に並んだり、贈り物になったりと大切な人達に届けられること。趣味で始めた陶芸だけれど、自分で使う分の器だけではなく、贈りたい人を思いながら作るようになってきました。きっかけは、ある友人の結婚祝いに贈った「夫婦茶碗」。結婚式に参列できなかった私は、夫婦茶碗を作って贈りました。式の後、友人から「あなたのくれた器、結婚式でのファーストバイトで使ったんだよ。」って…。「贈る」だけから「使ってもらえる」幸せを感じた瞬間でした。
 

現在、ささやかですがボランティアで「陶芸教室」を開催中です。週に1回、とある病院の一室を借りて、入院患者さんや外来の患者さん、その友人や仲間達が集う憩いの空間になりました。作り方を教えるということより「自由に、のんびり、一緒にゆっくりと。」そんな思いで、それぞれの作品に手間暇かけて関わっています。
 

器をつくると、食が楽しみに。食を楽しめば、また器への創作意欲が駆り立てられて…。「陶芸」も「農業」も、やはり、じゅんぐり循環しています。
 

「農業」と「陶芸」。私にとって「土臭い」時間がとっても心地いい。そんな私が、これから"土便り"を通して、季節や行事の香りをお届けします。ほっこり、のんびり、お茶を傍らにお付き合いください。
 

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