Vol.4器旬の香り

はやいもので、秋も深まり収穫の時期を迎えました。初夏の頃に種まきをした稲達は、稲の穂先を地面に向けて黄金色に輝かせています。誰が教えるわけでもないのに、どの田んぼを見ても稲穂達は実りを揺らし、その里の風景を描いています。


田植え前には、水面に空だけが映りキラキラと輝き、夏の暑い頃には、青々とした稲が風に揺られて、風の波を感じる事ができます。そして、収穫を迎えるこの時期は、眩しいぐらいの黄金色が一面に広がっています。このような目に見える風景は、田舎が近くになくてもいろんな情報によってイメージを膨らませる事はできるでしょう。しかし、皆様はその時どきの"旬の香り"があるのをご存知でしょうか。


とくに"旬の香り"を感じられるのは、この収穫の秋。地面が乾き、少しヒビの入った固い田んぼを歩くと、足に触れる稲からほんのりとご飯が炊ける香りがするのです。我が家で育てている「黒米(白米と炊くと赤飯のようになります。)」の田んぼからは、あぜ道を歩いただけでも、その独特な香ばしい香りがしてきます。「あ~、いい香り~」と、しばし足を留めて田んぼを眺めてしまいます。この時期、ドライブで秋の実りを感じたときは、車を留めて大きく深呼吸をしてみてください。きっと、秋の香りがふんわりと感じられるかと思います。


今年の稲作は、前半、雨に左右されて作業がなかなかはかどらずやきもきしたり、トラクターでの立ち往生事件にも遭ったり・・・どうなることかと思ったけれど、先日無事、清々しい秋空の下で稲刈りを行いました。「稲刈りをやってみたい!」というご夫婦も参加して、それはそれは賑やかな稲刈りになりました。農作業の合間にとった昼食では、今年の新米を用意し、みんなで田んぼの風景をみながらおにぎりを頬張りました。汗をかいた後の体には、新米の甘味とキラキラした表面の食感が全身を駆け巡り、感動してしまいました。毎年の事のはずなのに、昔の記憶がどこかに行っているようで(笑)、新鮮に感動してしまいます。


今は、刈り取った残りのモミを2~3日間天日に干し、最後の仕上げをしています。お天道様がじんわりとお米の甘味を引き出してくれるのを待っています。


今年も素敵な実りをありがとうございました。


 

 

 

 

 

 

 

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