第4回 東北・出羽三山で 月にタッチ!
祖父母の祖父母まで遡ってもみんな秋田生まれという東北のDNAが濃厚な私は、小さい頃からなぜか「月山」のことが気になっていた。そこがどんな場所なのかはわからないけれど、なんとなく「神様がいるところ」なのだろうと思っていた。その月山、それから湯殿山と羽黒山を合わせた霊場・出羽三山を、お盆前に二日かけて参拝してきた。
私はオーラとかエネルギーとかをはっきり見たり感じたりできる訳ではない。けれど、最近そういう世界をとても身近に思うのは、見たい・感じたいという意識が芽生えたからなのかもしれない。そんな時には不思議なもので、そういう人に出会う。
月山の9合目にある仏生池小屋で、旅をしている気功師(Mさん)に会った。彼は伊勢や高野山など全国のパワースポットを巡っている途中で、この後は白神山地と恐山へと電車を乗り継いで向かうのだそうだ。
「月山は思ったよりもエネルギーが低い。片鱗はあるのだけれど・・・」とMさんは言った。それは私も感じていたことだった。とても静かで広くて、種類の多い高山植物のお花畑が"黄泉の国"の景色を思わせるのだけれど、どこか世俗っぽいというか、人間の世界・物質的な世界側にうずまっていく感じがあるのだ。昼にお参りした羽黒山も同じだった。なんでだろう・・・?そんな話をMさんと小屋の主人の工藤さんとでひとしきりした後、一人で外に出たらあかるい月が出ていた。
月山の御祭神は月の神・月読命。半分が少し膨らんだそのお月様は、山におとずれた闇の世界を優しく無言で包んでいた。空は黒く凛と澄んで、頂上の方角に山のシルエットがふっくらと浮かび上がった。そのひそやかな光に触れたら、本当に自然に体が動きはじめた。月の光という音楽に触れて、手足も体の中も静かに踊りだした。
"神様やっぱりいるんですね。会えて嬉しいです"
次の日の朝、Mさんと湯殿山に下りそこでも神様に"触れた"のだが、こちらは昨夜のとはかなり違う質の体験になった。Mさん曰く、「持っていかれた」。出羽三山の奥の宮である湯殿山は、御神体の姿がそのままに現された"清浄神秘の世界"で、昔からここでのことは「言わず聞かず」の掟があるとのこと。(なので具体的には記しませんが)あまりにパワフルな神様。私たちはその聖域の外に出た途端、本当に身動きできないほどぐったり疲れてしまったのだった。「持っていかれたね。神様がエネルギー必要だったんだろうな。」とMさんが言った。
そういうこともあるんだな、神様もこんなに年がら年中お参りする人がやって来たら疲れてしまうものなのか。あるいは浄化しなくてはならないことやものが、最近多すぎるから。人はもらうだけでなくて、ちゃんと恩返ししないとな。できるのは"感謝"・・・それから"祈り"かな。そんなことを思った。
Mさんは月山から下る道中ずっと、登山道に落ちているゴミを拾っていた。