第15回 新潟で「禅の道」にタッチ!

 私ごとですが、この秋で新潟を去ることになりました。「地球の喜び日記」最終回は私の今後の道にも関わる禅のこと、新潟の尼寺のことを紹介します。

 

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 早いもので新潟に来てから6年半。たくさんの出会いがあった。その中でも思い出深く、縁深かったのが魚沼市の小出にある尼僧堂「龍谷院(りゅうこくいん)」だ。ここを初めて訪れたのは、実は今から10年ほど前、大学卒業を間近にした学生時代のこと。就職活動もしていなかった私は、何となく"禅"の道を探り始めていた。ある禅の専門道場に「そちらで修行させていただきたいのですが」と電話したところ、いま女性は受け入れていないので、新潟にある尼僧堂の方へ連絡してみてください、と言われたのがきっかけ。そして龍谷院に1〜2週間ほど滞在させてもらった冬は、今思えば私にとって新潟の「豪雪」の初体験だった。故郷の秋田でも記憶にないほどの雪の量と、新潟ならではの水っぽい"寒さ"。お日様が差すと直ちにきらきらと溶け出す雪。作務(日々の仕事)の雪かきの時、キュッと長くつが雪を踏みしめる音。

 

 印象的だったのは、ある日、尼僧の中村様が「今日はちょっと遊びにいきましょう」と言ってみんなで出かけた地元のスキー場でのこと。龍谷院に参禅していた他2名の尼さんと中村様と、みんなで肥料袋をソリにしてキャーキャー言いながらゲレンデを滑って遊んだ。黒い作務衣を着て頭にタオルをまいた尼さんの集団が、子どものように本気で尻滑りをする姿は周りの人にどう映っていたのか。少なくても私には最高にかっこよく見えた。「遊ぶことも全部が修行ですよ」と目元をニヤリとさせながら中村様は仰った。その後、大学院の頃や社会人になってからも、龍谷院には摂心(一定の期間、集中的に坐禅すること。無言の行で肉食もしない)に通ったりしてお世話になった。今は堂長(住職)様と中村様二人で住まわれていて、保育園の経営や、座禅会や写経の会を催したりもしている。

 

 私にとって初めて触れた、憧れでもありタブーでもあった、尼僧という生き方。「私は仏さまと結婚しましたので」という言葉の重さ。目頭を潤ませて、今こんなことをしようとしている、というお話をされる。今回お話しした時は、新潟で自殺者が多いという現状を憂いて「禅カウンセリング」を始めたとのこと。一人でも救えたら、という慈悲に基づいた、見返りのない社会活動だ。そう、私が惹かれていたのは、その方向の純粋さなんだと思う。禅の修行を重ねていくことが、自分のみならず他者の救いにもつながっていくこと。それが役割だということ・・・。

龍谷院の禅堂
龍谷院の禅堂
 
お年寄りが集えるようにと修された土間(龍谷院)
お年寄りが集えるようにと
修された土間(龍谷院)
生誕仏が保育園の子ども達を見守る(龍谷院)
生誕仏が保育園の
子ども達を見守る(龍谷院)

 

 今年になって、もう一つ思い出深い尼寺との出会いがあった。新発田市の蓬林寺(ほうりんじ)というお寺だ。こちらは龍谷院のように檀家さんがいる訳でもなく、町の通りに面した所にひっそりと佇む小さなお寺。そこの新住職のJ様に、自分の道をこれからどうしようか悩んでいるのだが、と相談したことがあった。そのおかげではっきりと決まったことは、私は出家はせずに、在家で社会人として禅に向き合ってみる、ということだった。

 

 J様は少女のような目をした可愛らしい方だが、言葉にとても迫力のある方で、強い語気で「私はここ(蓬林寺)でお茶飲みの相手をしたいのではないの。仏法(ブッダが説いた真実)を伝えたいんです」と仰ったことがあった。今、日本のお寺でその役割を十分に果たせてはいる所は少ない。つまり、"葬式仏教"と言われるほどの、信仰や精神性よりも形だけが生きているような拠点としてのお寺の姿が目につく。なぜそうなったのかは、時代やいろいろなもののせいにもできるが、つまるところ一人ひとりの仏教徒/修行僧の向き合い方なのだと思う。私が出会った尼僧の方達は、仏道を行く者としての責任を謙虚に感じておられた。自分を修めること、成長し続けることは、決して自分のためだけでなく人の社会のためでもある、同じことである、と体現しておられた。その果てでの、あの慈悲と自信に満ちた笑顔なのだ。そう、まさに観音様のような。

町の尼寺は花であふれている(蓬林寺)
町の尼寺は花であふれている(蓬林寺)
お地蔵様や観音様が迎えてくれる(蓬林寺)
お地蔵様や観音様が迎えてくれる(蓬林寺)

 

 そして私はというと、来春、禅の師匠と仰ぐ方が房総半島の山の中に禅の道場を開単するので、この12月から千葉で自然学校の仕事をしながらお手伝いと修行をさせていただくことにした。

 

 自分の役割、それは与えられる光でもあり、実は自分の心が選び取っている光でもある。どちらもが今の自分をそのままに照らしている。自然と禅ー私にとっての生涯のテーマを探求できる、最善の道を選んだと思っている。

 

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 長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。「千葉編」に続くかもしれません。またお会いしましょう、この地球で!

 

最後はやっぱり米山!引越前日、お世話になった山の会会長のHさんと
最後はやっぱり米山!引越前日、
お世話になった山の会会長のHさんと

 

<インフォメーション>

 

 ★龍谷院(新潟県魚沼市井口新田360)
  「禅カウンセリング」
   面 会:毎週日曜 16:00~17:00/19:00~20:00
   TEL:いつでも 025-792-0804
   料 金:無料。
   秘密厳守。行事と重なった日など対応できない場合もあり。

 

 〜以下、禅カウンセリングのご案内 チラシより〜 「苦しく、辛いときこそ、みんなで手を取り合って行きたいと思います。もしよければ、あなたの隣にいて一生懸命にあなたのつらい気持ちを聴かせてください。苦しみや辛さも一人より二人で分ければ、半分に減るのですから。」

 

 ★蓬林寺(新潟県新発田市金塚457)
   TEL:0254-33-2939

 

 ★朽木學道舎(滋賀県高島市朽木小入谷263)
   H P:http://dharma-winds.net/
   TEL: 0740-38-5173
   師匠の道場。毎月「摂心」があります。千葉の道場は来春スタート予定!

 

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