Vol.7 初夏、ブーケをつくる2 Vol.7 初夏、ブーケをつくる2

4ひきのねこ

「お、可愛いね。いいと思うよ。こんどはこの世界をもっと広げてみようか」悠三さんがブーケの中に紫蘇色のヒューケラを入れると、ブーケがぐっと引き締まった。稲の穂の束を後ろに添えたり、大きな濃い緑の葉っぱを当ててみたりすると、可愛らしくまとまった淡いパステル調のブーケが、なんだかぐっと色っぽく、一瞬で大人の表情になる。


友人は、初のブーケに挑戦だ。すでに手の中でバラバラして崩壊寸前になっている。太い茎のダリアに、グリーンのススキの穂の細い茎、堅い葉っぱがあちこちに広がる独特の形をしたコルダータ・・・個性豊かな面々を一つにまとめるのに悪戦苦闘している。「手の中で違和感がないようにして、茎の自然な形に沿ってやったらいいよ」と、言われたアドバイスを伝授してみると、だんだん調子が出てきたようだ。グリーンのアルストロメリアをブーケに入れる。野性味と気品があって、原種のほうがいいな、と思う。熱帯雨林の新種の植物みたいな、鳥みたいな、不思議で友人らしいブーケが出来てきた。悠三さんに見てもらう。「お、なかなか斬新なのができたね。二人とも花の可愛さをよくわかってきている感じだね」嬉しい言葉を貰った。

 

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店では新人スタッフの方がブーケの修業をしていた。私たちに見せるのとは違う、プロの表情で悠三さんの厳しいチェックが入る。「まずお客さんの希望があって、予算や時間、どういうシチュエーションで渡すか、いろんなことを考えながらつくるから邪念が入りやすいよね。その中でどうするか、最初は大変だよ。悩みどころだね。そこが楽しいことでもあるけどね」褒め言葉に浮かれていたけれど、こんなふうに好きな花をゆっくり選び、自分のためだけに自由にブーケをつくるって、贅沢なことなんだな。のびのびと、花と戯れる自由時間。これからも大事にしていきたい。

 

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