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記憶に残るセツ先生の言葉

寺門孝之(画家・神戸芸術工科大学教授)
1983年~1985年在籍

入学式の日、初めて先生を生(ナマ)で見た瞬間、電撃が走る。やっと正しい場所に自分がたどり着いたという実感。
「この中には絵を描き続ける人もそうじゃない人もいることでしょう。でも、今日からみなさんは、美を生活の真ん中に据えて生きて行くことになります。」

初めての大原写生旅行で、チャイニーズホワイトを使い果たして先生にした質問への回答。
「先生、白が無くても絵は描けますか?」
「白が無いと絵は描けないよ、誰かこの子に白を売ってあげな!」

初めての大原写生旅行での絵の合評会で僕の絵で水平線が斜めになっているのに対して。
「なんだ? 絵では、水平線は水平なんだぞ。オマエはカメラでもやってたのか?」
高校・大学とずっと8mm映画を撮っていたので、先生の千里眼にびっくり!

合評会で先輩の絵を誉め称えて。
「なんだこのウンコ色! きれいっ! A!」

日本グラフィック展で大賞を頂いた直後の合評会で。
「お前の絵はカタチは面白いところがあると思ってはいたんだ、でも色はまだまだだから、うんと勉強したほうがいいぞ!」

コンピュータを使った制作にのめり込んでいた頃の展覧会に来てくださって。
「なんだ、ちゃんと絵を描いていたんだな、安心した。コンピュータで絵を超えるとかなんとか言ってたから、実は心配してたんだ」

セツの近所の銀行の前でたまたま出逢ったときに。(ぼくはその日の夕飯代を引き下ろしたところだったのだが)
「なんだオマエ、銀行と取引があるのか! 絵描きはお金が儲かると絵が描けなくなるよ、気をつけな!」

先生の個展会場で。先生にお土産を渡そうとする来客に対して断固として受け取らずに。
「気持ちをモノに託すなんて下品です、持って帰ってください!」
その横であっけにとられてる僕に。
「オマエは汽車賃払って来てくれたんだろう? それで充分!」

ちょっと痩せ気味の僕の友人に。
「なんだオマエ、胃でも悪くしてるのか? かっこいいぞ!」

・・・先生からはどんな言葉が飛びだしてくるか、まったく予測がつかなくて、僕はいつも緊張ばかりしていました。なんて贅沢な日々だったことでしょう。

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  1. 星信郎 より:

    寺門くん こんにちは。

    長方形がうっとりするほど美しい、ちよぴっとウンコ色は顔の色、うつくしい。 
    先生は天国へいっても描いてるのかな? お金もちにならないようにね。

    ありましたね〈こくぎん〉という銀行、ある日に若い女子行員が、セツのちかくで愛想よく先生に、お早うございますの挨拶をしたとき、先生は遅刻したセツの生徒かと思い「こらっ!なんだ、おまえ」と声高に応えた。行員はびっくり恐縮のようすでスミマセン、と首をすくめて笑っていました。

    寺門くんとは久しくお会いしてませんね、いつものピンポイント、ギャラリーの個展、ありますか? ホシ

    • 寺門孝之 より:

      星先生☆! 素敵なコメントありがとうございます!☆ 2年間は全く休まず通ったと思います。セツの日々・・・面白かったなあ・・・
      金色とウンコ色は似ていますね。はい! 1/11~23 新しい(昨年9月からの場所)ピンポイントギャラリーで展覧会させていただきます。絵はがきが刷り上がったらお送りします。

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