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セツ先生を撮影した日

土器 典美(ギャラリー・オーナー)
1970年~1972年在籍

前から好きだった写真を勉強して、しばらくの間、フォトエッセイストとして仕事をしていた時期がある。雑誌に連載していたページが1冊の本になり、運よく好評で売れ行きよく2冊目を出版できることになった。2冊目は「私の好きな物とそれにまつわる人」の本。(題名「ラクダに乗ったラクダのかご」主婦の友社刊)しかしどちらかと言えば、物より私の好きな人に寄った本だった。セツのカフェのコーヒーカップが好きだった話とともに、好きな人と言えば絶対にはずすことはできないセツ先生にご登場願うことになったのだった。

セツ先生にお願いの電話をかけ「いいよ、お前の本なら撮らせてやるよー」と快諾してもらえた時は小躍りしそうだった。とはいえ、素人に近い私がセツ先生を撮影するなんて…後になってドキドキが止まらなくなった。撮影の日、緊張で手が震えるのを抑えながら学校のカフェで先生を待った。先生は糊の利いたステキなストライプのシャツを着て階段を下りて来て「どこで撮るの?カウンターがいいのか?」といつものように笑っている。

ファインダー越しに私はすでに胸がいっぱいになっていた。たかが一生徒の本のために、セツ先生が時間を作って服を整え私の緊張をほぐそうと楽しそうにふるまってくれているのだ。泣きそうなほどの感激と失敗できない緊張で心臓が破裂しそうだったけど、夢中になって撮影させていただいた。先生は途中で実にさり気なくカジュアルな服に着替えまでして、おぼつかない私のカメラマンぶりに協力してくださった。たぶん有名無名にかかわらずセツ先生の接し方は変わらないのだと思う。セツ先生の言うフェアであること。威圧感など全くないのに相手の背中をピシリと伸びさせる微妙な気迫、そして大きな大きな優しさ。あらためてセツ先生の深さを思い知った気がした。

出来上がりの写真を持って再びドキドキしながら学校に行った。先生は「おや、いい写真じゃないか。モデルがいいからねー。」と冗談めかして話しコーヒーをいれてくれた。私はやっとほっとしたと同時に、セツ先生を撮影するなんて大胆なことができた幸福感でいっぱいだった。

この撮影の一日で増々、セツ先生を尊敬する気持ちが膨らみ、人として先生のような在り方でいたいと強く思った。誰でもが出来ることではないけど、その日のことを忘れないようにしようと今でも思っている。自分事をお願いしておきながら大切なことを学んだ一日だった。

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  1. T・N より:

    あぁ いいなぁ、土器さんの写真と文。先生の人となりが、よく出ていて、読んでいて、胸がほっこりする。

  2. 87 より:

    こんな膝をしてたんだ。。。はじめて見た。男っぽい膝。

    私の在学中、セツ先生はラッピングをしたように胸元以外の肌の露出をすることはありませんでした。夏も長袖シャツにセツパッチという今でいうスキニーパンツをすでに履いていたのですが

    やっぱり時代の先駆者だったのだなぁと思います(セツパッチは特許権があると語られておりました)。

    素敵な写真をありがとうございます。

  3. 内川瞳 より:

    ホント珍しいセツ先生の短パン。典美ちゃんが脱がしたのね。笑
    本当にセツ先生は有り難い先生ですね。あそこで過ごした時代があるってだけで宝です。典美ちゃんがロビーでカフェを入れてる頃私もモデルで行ってて階段上がって行くとニコニコ笑って迎えてくれました。よくお話しもしたわね〜覚えてる?

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