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弱いから、好き

加藤裕將(イラストレーター)
1968年~1972年在籍

1968年といえばもう半世紀も前になる、思えばものすごいタイミングだったと思う。
   14歳から18歳でほぼ人生の通る道が決まってしまって、あっと言う間に2019年という感じだ。
   そして幸運な時代を過ごしたんだなと最近つくずく思う。ありとあらゆるものが前に進み、つぎつぎと新しいモノが登場した。
   そんなきっかけの一つに18歳からのセツモードセミナー入学があった。
   ただ、先着順で楽そうだからと、とりあえずの腰掛に通ってみたら校長の長沢節という人がそれまで全く会ったことのない面白い大人で、あらためて略年譜を見たらなんと父親と同世代だった(ほぼラクダのモモヒキ、ステテコ世代である)ボク達若者は1968年から1969年というラブ&ピース&フーテン、ドント トラスト オーバー サーティの時代だ。
   そのずっと前に渡仏。パリコレ、ジャルダン・デ・モードだから違いすぎる。セツモード自体の建物も室内もまるでパリのモンマルトルだった(行ったことないけど)あれを自身で設計したというのだから、さすがといおうかなんと言おうか。
   おまけに痩せてることで生涯唯一のエコ贔屓までされてしまい、楽しい画塾生活だった。しかし、絵の評価はさんざんで初めての人物水彩の評価はなんと『D』であった、どんなに酷くてもCだから、問題外ということで、初めは全く理解できなかった、が他の生徒のA作品を見てるうち、だんだん色が見えてきて時々Aも取れるようになり肉体化できたのだと思う。クロッキーで「線と形」水彩画で「色とリズム」を発見する基本中の基本をこの時、見つけた。それが使えてるかどうかはまた全く別の問題ではあるが・・・
   今思うセツイズムはと、もし聞かれたら、出てくるのは「弱いから、好き」「細いからかっこいい」「缶ジュースみたいな下品なものを持ち込むんじゃない」「野の花を摘むな」などいとまがない。たぶんこの時代とともに体内深く大きく影響されたんだなと、今さらながらあらためて思う。
   いつも機嫌良くシャキッとしていたセツ先生。この歳になるとそんなことがいかに難しいか、2019年の秋晴れの空を眺めながらただ呆然としている。

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  1. 星信郎 より:

    加藤君、ひさしく会ってなかったが健在ですね。 1970年代ごろのセツの生徒は凄かった。日本じゅうのヘンナ若者が全部集まったかと思うぐらいでしたよ、あの休憩時間の賑わいよう、そこではセツ先生がいつもガキ大将でしたね。その情景が加藤君の絵をみていると完全に蘇ります。
    わいわいがやがや狭い階段を登ったり降ったり、人の通る狭い床には小さな黒いテーブルが並んでる。カウンターの上の大きいコーヒーミルも懐かしい。超長身の黒い帽子の人物はスズキコウジに見えてくる。

    みかけは普通、絵は並ではない加藤君、いつも人をびっくりさせてくれるが、このヘンテコリンな人物群像は、あの当時のセツ物語にドンピシャリ。さすがだね〜。  

    • 加藤裕將より より:

      星先生さっそくコメントありがとうございます。

      ランチの肉詰めピーマン定食やパーティーのからみ餅ざんまい、一升瓶のワインなんかのことも書きたかったんですけどまた何かの機会に・・・
      でもあの建物の詳しい話は今のうちにだれかに書いておいて欲しいなと思います。(設計や建築時のこと覚えてる人っているんでしょうか?)
      絵の中でセツ先生が座ってる席は、あの頃ロビー番長だった峰岸さんの席でもあったということでした。

      • 星信郎 より:

        ややっこしい建築 セツのロビー情景を、これほど詳しく描写できる加藤君は建築にも関心の強い人なのかな?と、思った。
        あの当時、建築に知識のあったのは東北大学建築科卒の穂積和夫先生でしたが、設計デザインはセツ先生ご自分で、、、ダンボールの高さ50センチぐらいの模型を創って楽しんでいましたよ。
        土地は北向きの崖崩れ跡、建築業者がさら地土台を固めて売りに出したものです。周りは未だ空き地でしたが、今では多分許可できない住宅地でしょう。 新聞広告で見つけて、路面電車で四谷三丁目まで来てから、なかなか現地にたどり着けない所でした。曙橋駅はずっと後にできたから。
        建築会社は、花山工務店(のちに倒産) 設計士(田中さんという若い女性、のち死亡) 現場監督(為永さん現在不明)
        テーブル、椅子、などは、直ぐ近くの岡田商会の古物でした。

        新築最初のころは六本木のニコラスピザ店が入ってましたが、セツの生徒はカレーライスしか食べなくて、、、そのころのロビー番長ミネギシは、さっぱり勉強しなくって。 
        もっともっと詳しくは、今度会ってから話します。僕はあの辺、目をつぶっても歩けます。

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