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「絵はコンポーズなのよ」

さとうあや(絵本作家)
1991年~1997年在籍

セツモードセミナーに入ったきっかけは、長沢節先生の本や雑誌を見て、面白そうな学校だと憧れていたのと、一緒に暮らしていた姉が夜間部へ通うようになったからです。その頃はデザインの仕事をしていたので、夜間部に入りたかったけれど、抽選に外れたので半年後、午後部に入りました。
   セツは校舎が白くモダンで、中庭の葡萄棚や木漏れ日もそこだけパリのようでした。絵の具の匂いと鉛筆の音、休み時間になると、セツ先生や星先生の「コーヒーが入ったよー」の明るい声。先生方は皆絵描きで、それぞれの自由を重んじつつ、他で味わった事のない心地良い空間に、こんな素敵な学校が新宿の住宅街にさりげなく何十年も時を刻んでいたのかと驚きました。

初めの水彩の授業では、セツ先生に「これは何人かが選んでいたけど、全然ダメよ!」とコテンパンだったのですが、「絵はコンポーズなのよ、色面」と言う先生の言葉は今でも時折思い出します。それから水彩の授業を重ねるうちに、セツ先生や星先生からA!と言ってもらえるようになり、アート展や卒業の時に賞をもらえたのは、その先絵を描く励みにもなりました。
   研究科やゲリラも合わせると5年通いましたが、大原の写生会では、絵の具や画板を持って漁港を歩き、セツ先生は自転車に乗って、数十人もが一斉に絵を描く風景はとても愉快で、セツの写生会だけは毎年参加したいと思ったものです。

セツ先生は背中に羽が生えているのではないかと思うくらい軽々と歩いて、デッサンのクラスにセツ先生がスッと入ってくると、程よい緊張感が走りました。「よく回って見て、一番良いところを探すのよ!」と熱心にモデルを見て描くセツ先生に負けじと、みんな集中して描いていました。

セツ先生と二人で話したのは数えるくらいでしたが、ぬいぐるみの話、古賀春江の話、友達と作ったZINEの事、等々よく覚えています。セツ先生と目が合うと、眼鏡の向こうにキラキラとした瞳がいつも光っていて、チャーミングでかっこいい人でした。
   「セツ先生ならこの絵は無視かな。いいよー!かな」などと時折思いながら今も絵を描いています。
   皆それぞれの道を行き、セツを出てからが始まりでもありましたが、都内で写生会をしたり、仲間と共に絵を描けたのは夢のような時間だった気がします。
   押し付けが一つもなく、普遍的な美しさのようなものが沢山散りばめられていた、セツモードセミナーや仲間から得た宝物は、今も私の礎となっています。

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  1. 星信郎 より:

    さとうあやさん こんにちは。

    セツ先生のメガネの奥のギョロ目は優しかったり怖かったり、、、あやちゃんは優しく優しく表現してますね。さすが絵本作家の優しさです。 セツ先生の背中には羽がついているのではないかと思ったという文章、僕も同感です。 大原漁港民宿のおばちやんは「セツ先生は自転車で背中にプロペラつけてあっちこっち飛び回ってる」と言ってましたが、民宿晴海のおばちゃんは詩人だなあと思いました。

    藤野篠原の里、写生会は今年もありますか? あるといいね。星

    • さとうあや より:

      星 信郎 先生へ

      星先生 こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      民宿晴海のおばちゃん 、詩人ですね!
      「自転車で背中にプロペラをつけて あっちこっち 飛び回ってる」ぴったりの表現です。
      たしかにセツ先生の目は怖くもありました。
      星先生に絵を観ていただく時は、今でも緊張しますが、いつでも私の下手な絵を褒めて、良いところを見つけて下さるので、嬉しくて不安が吹き飛びます。仕事をしていく上でも、とても励みになりました。
      本当にありがとうございます。
      たまに展覧会などでお会いできた時の色々なお話も、楽しくて、帰るのが惜しいくらいです。
      今年も藤野写生会は9/14.15.16です。毎年藤野にいらして下さって感謝します。星先生に、コーヒーを淹れてもらって、絵を描いたり、お話しできるのを楽しみにしています*

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