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セツの隅っ子

菅沼麻美(オカピ・トロル/tinyfogtroll)
1988年~1996年在籍

振り返ると、今も昔も変われていない自分が恥ずかしいのですが、セツに入って本科の2年間、なかなか馴染めず学校のフロアで絵を描く事が苦手でした。自分の後ろに、前に、迷わずイーゼルを立てどんどん描き始める皆の勢いに怯えて、縮こまったわたしが選ぶ角度や、節約してセツの絵の具セットをまるごと買えなかったので、足りない色だけ買い足そうと尋ねたら「揃えても使わない色はあるから持っているので良い」と確かM先生に言われ中途半端に物足りない絵の具とか、つまりコンプレックスの塊で…。そのうち学校の目前まで通学しては来るのですが、なんだかお腹が痛くなる気がしてUターン。

セツと世界堂の間にある新宿の古い図書館で何か数冊本を眺めては、また電車1時間10分プラス徒歩40分をかけてトボトボ家に帰り、自分の部屋でひたすら朝に晩に絵を描いていました。そうやって苦しみながら少しずつ自分なりに描きたいスタイルや、絵の中では自由を見つけ始めて、描き貯まっていった絵が思いがけずセツ・アート大賞を頂きました。銀座で開催されるアート展に出品されることが決まっただけで夢かな?と思い、バイトの帰り新橋のギャラリーへ呑気に辿り着いたので、迎え入れてくれた少し先輩のたまちゃんが、受賞していた絵の前に連れて行ってくれて、わわわ!となりました。

セツ先生の第一声は、見知らぬ生徒(わたし)の少しシャクれたアゴを褒める言葉だったと思います。そのほかその日何がどうしたのか…すべてが眩し過ぎてほとんど覚えていません。でも、頭の中で思い出していたのは「アート展に今年だめでも、また新しい筆買って沢山描こう…」って思っていたなぁってこと。セツに憧れて、それなのにオドオドして自由の難しさに苦しんで…。漂流しかかっていたけど、ずっとずっと手を動かしていたら泳げるようになっていたのかな?こんなわたしでもその後セツゲリラにも入れていただき、引き籠ったままでいたら出会えなかった、(実はおんなじように悩み事もある…)当時から30年近い年月親しくいられるような友や先輩と出会えました。

もしかして、わたしはセツ生活を謳歌したとは言えない特殊なパターンの生徒かもしれません。それでもこの時間と、セツ先生に見つけられると摘まれたアゴや耳タブやわたしの絵が、ずっと今もしあわせにしてくれています。わたしがセツ学校に行きたいな、と思ったのは「歩みのノロくて重いのも、立派なひとつの個性で、可能性を秘めている」って入学案内書に書いてあったからです。そこに鉛筆で薄く線を引いて、ここで息をして頑張ろうって思いました。今もその言葉が隅っ子のわたしの光で、魔法です。

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  1. 星信郎ゆう より:

    菅沼さん 隅っ子でしたか??? 人は見かけじゃ分かんないと言うけど、絵を見て作者の判断も分かんないね。本質は裏腹に現れることもあるということか? のびのびと自由奔放 大胆な絵を描くのが菅沼さんと思ってましたが、、、今更ながら僕の安直。 しかし菅沼さんは沢山いい仲間ができてすね、人柄です。

    • 菅沼麻美 より:

      はい、キモチのちっちゃい隅っ子じゃないと落ち着けないまま変化無しです。どこかに付いてるスイッチを自分で押せたら、いつでものびのび出来るのかな、と憧れます。受賞の絵を搬出する時、星先生が「欲しいな…」仰って下さったこと覚えてらっしゃいますか?あの絵をオマージュして描こうとした絵が気に入らなくて描き直しました。描き直したこの絵は、学生時代はいていたスカートの柄をモチーフにしたのですが、セツ先生曰く「オマエのスカート、テーブルクロスみたい!プー!」褒めて、ナイですよね…えへへ。可愛い思い出です。
      コメントありがとうございます、わたしのともだちみんな優しいです。

  2. たまちゃん より:

    まみちゃん登場だね~。

    私がアート展の時に、そんなに親切にしてたなんて覚えてないな~。読んでて、名前が出たのでビックリ‼

    まみちゃんはずーーーっと気後れしてたけど、いつも(今も)おしゃれで可愛らしかったよね。

    まみちゃんがなかなか思うように描けなかったのを合評会でよく初川先生が、「あなた!そんなにおしゃれなんだから絵もおしゃれに描けばいいのに!」と何度も言っていた事が、忘れられないよ。

    このセリフは他にもいろんな人に先生は言っていたけど。

    「褒められる絵が、恥ずかしくない絵が、描きたい‼」と言う無意識の気持ちが、今日はこれ着て行きたい‼と思うような気軽さを圧し殺してしまうんだろうね。

    初川先生にそう言われていた人は、本当におしゃれだったしね。

    まみちゃんは天才だから思ったように描けばいいんだよ~。これからも。
    天才すぎて笑うけど。

    • 菅沼麻美 より:

      たまちゃん〜、またひとをバカボンみたいに…。
      わたしが仮にバカボンなら、いつも「これでいいのだ!」
      と言うように見える(わたしには見える!)
      たまちゃんは、バカボンのパパだと思います。
      (なかなかこれでいいのだ…と思えないトコがわたしの弱点だよな)
      ヨーロッパ写生旅行同室の仲から、親切にしてもらってますね。
      なんだか対照的なふたりだと思うけど、
      会えば笑っちゃうから、いつもありがとう!
      コメントもありがとね!
      ありのままにしか力は尽くせないので、楽しく。

  3. サクラチエ より:

    昨年12月吉祥寺のmonoギャラリーのオカピ展、見に行きました。
    私が見に行った日はとても混んでいました。
    展示されている作品はどれも魅力的で、いらしていたお客様も今年も楽しみにしていたのよ。ーとお話ししていました。
    なので、私もまた来ようと思って帰りました。

    セツ先生の絵、とっても素敵ですね。
    この絵は、何に描いているのですか?
    普通のキャンバスではないような?

  4. 菅沼麻美 より:

    サクラチエ さん
    オカピ展見てくださったんですね、嬉しいです。(わたしたちも初日の開場前に伺おうとしていたのですが結局伺えず、申し訳ありませんでした。)きっと混んでいる時間帯で、お声がけ出来なかったのでしょうか…せっかくお目にかかれる機会でしたのに残念でした。(来年は10/10〜なんですよ…よろしければ♡)
    サクラさんの描かれたセツ先生も妖精感があって、パステルなのかなぁ、大きいのかなぁ、いいなぁと思っていました。わたしはセツ時代は主にアクリル水彩を使っていましたが、今は自己流で油絵の具を使っています。今回のサングラスの絵は、F0 size のキャンバスです。思いついてさーっと描いたので、(締め切り直前に、用意していた絵が嫌になり…乾かす時間が足りなかったので…! )とっても不安でした。素敵と言って頂けて、うーれしーです。セツ先生の軽やかなオシャレ感が少しでも感じられたらいいなぁと思いました。
    コメント残していただけてありがとうございます。

    • サクラチエ より:

      お返事ありがとうございます。
      嬉しいです。
      セツ先生のオシャレ感
      とっても伝わってきますよ。
      オシャレで軽やかな、でもすっっごく強い何かを持ってるセツ先生の感じが眼鏡の奥から伝わってきます!

      吉祥寺よく行きますので、今年のオカピ展ではぜひお話したいです♪

  5. 菅沼麻美 より:

    眼鏡の奥から!なんだかそんな気がしてきました…!
    自分の部屋のどこかに掛けて、セツ先生に居ておいてもらおかな。
    来年じゃなくて、今年でしたね、10/10〜 笑
    ぜひ、会場で声かけてくださいませ♪♪

  6. 神田茜 より:

    この絵の色すごく好きな色。メガネの奥がなんだか微笑んでいそう。

    絵のことは、私は何もわからないけどね。作文読んで泣きそうになりました。セツ先生がいて、セツの仲間がいて、菅沼さん良かったね。 才能を守ってもらえたんだね。個性も。「歩みのノロくて重いの」って、私もそうだな。

    いつも、菅沼さんの絵は私をしあわせにしてくれてるよ!

    • 菅沼麻美 より:

      茜さん メッセージありがとう♡
      わたしたちの出会いもわたしがセツで絵を描き始めてからだものね、池袋でやった講談、パントマイム、舞台美術(?) あのイベントの時は若かった!(よく泊めてもらったね…) それが今も変わらず、笑ったり、励ましてもらったり、わたしこそ茜さんがコツコツと進む我が道をともだちとして伴走させてもらっていて、強く直向きにあらねば!と思っております。
      「歩みのノロくて重い」わたしたち、曲げずにいこう!笑

  7. カヲル より:

    文章読んで、セツ時代のまみちゃんが浮かんで来た。アート大賞貰った時の嬉しそうな顔とかね。ゲリラ展に行かせて貰った事とか、ああ懐かしいなって思うけど、全部今に繋がってるんだよね。
    私の知らない世界を見せて貰っているよ。
    これからも楽しくやっていこうね。

    • 菅沼麻美 より:

      カヲルちゃん〜 そうかぁ アート展の時も、ゲリラ展の時も、何度もその時を見届けてもらっていたことを今になってかみしめています。なんでか、ご招待しておきながら心細くて、記憶を霧散させてた自分が恥ずかしい。この作文もね、その後悔から思い出して書き始めたんです。
      わたしたちはなんと十代からのお互いを知っているし、それぞれ違う世界に派生して、それを背負って向き合ってて、なんだかゴブラン織りの大っきな緞帳を背にお互いの世界での出来事を見せっこして、ほぉーなんて、してる感じする。
      全部今に繋がって、わたしたち味のある奴になってるかなぁ…。思いがけず、ここにメッセージを書いてくれてわたしは感動しちゃってます。ありがとう♡ これからもよろしくだよ

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