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画板の想い出

おおの麻里(イラストレーター)
1995年~1998年在籍

「在学中に芽を出す。」大学を卒業して入った会社を2年足らずでやめてイラストレーターを目指した私は、どこかのんびりした雰囲気のセツの午前部のなかでひそかに、でもはっきりとそう思っていた。

ちゃんと絵をならったことがなかったので、セツで絵を描くことは新鮮で楽しかった。10分間づつ繰り返される人物デッサン、モデルを見ているような見ていないような水彩画の時間、外で描くなんて中学生以来な大原漁港へのスケッチ旅行。上手になりたい、自分らしく描きたい、といつも真剣だったと思う。そう、とっても真面目な生徒。みんなのあこがれセツゲリラにもなれない?まま3年間、褒められた記憶はほとんどないけれど。。。ある時コンペで賞をもらってその展示を見にきてくれたセツ先生が言った。「なんだおまえ、こんなイイ絵を描いてたのか」。先生いつものわたしの絵なんて絶対知らないくせにーとか思ったけど、嬉しかった。

イラストレーターになって数年経ち仕事に行き詰まっていた時、思い出したのはセツでの時間だった。大きな白い紙を前にしたときの自由でワクワクした気持ちと緊張感。線をひく楽しさ。なにをキレイと思って、なにを描きたいか。セツで使っていた画板を押し入れから引っぱり出し、大きな紙に太い筆で描いた。夢中になって20枚くらい仕上がった絵を見て、なんかこれが自分らしくていいんじゃないか、ここからまた絵を描いて行こうという自信になった。

2枚のベニヤ板をベベベと無造作にガムテープでつなげたセツの画板。それは今でもわたしの机の横にあって、すこし大きな絵を描くときに使っている。四隅をクリップで止めて。セツ時代のことを思い出していたら、20年ぶりにまたこの画板をかかえてどこかにスケッチ旅行でも行きたくなってきた。

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  1. 星信郎 より:

    おおの麻里さん セツ先生の似顔絵、まさに「なんだおまえこんないい絵」のできばえですね、素晴らしいです。
    ずいぶん昔のことですが、おおの麻里さんとは四谷のラーメンを一緒に食べた覚えがある。あれは夢かうつつか幻か?
    また一緒にデッサンをしましよう。

  2. おおの麻里 より:

    星先生☆ありがとうございます。ラーメン、そういえば食べたような。。。夢じゃないと思います、たぶん。もう忘れてしまったと思っていた当時のこと、いろいろ思い出しました。デッサン会、また参加しますね!

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