手拭い
しゃっきりとした肌ざわり。広げれば大きく、たたむと実にコンパクト。汗や水をよく吸い、洗えばぱりっと乾く手拭い。体を拭(ぬぐ)うだけではなく、鉢巻きやほおかぶりとしても、さらには切りっぱなしの端から裂いて、包帯、下駄の鼻緒などとしても使われ、古くから人びとの生活には欠かせない日用品でした。
この手拭いを彩る柄は、格子模様・縞・文字などの古典的なものから、動物、植物、生活用品といった身近なものまでさまざま。鮮やかなもの、渋いものと、色合いもそれぞれです。
柄を染める際に重要なのが、柿渋に漬けて固く丈夫にした和紙に、模様を彫りこんだ型紙。東京・日本橋で140年以上手拭いを製造している戸田屋商店では、「人間の手で彫り上げ、形づくる」という意味を込めて「形」という字を用い、「形紙」と表しています。多彩な柄を表現するため、この「形紙」にも高度な技術と数多くの工夫が重ねられてきました。
「手拭いは、柄はなんでもあり。制約がないんです」というご主人の小林賢滋さんの言葉のとおり、そこには昔ながらの柄とともに、干してある様子を描いた「うどん(写真中段中央)」のようなユニークなものも並んでいました。日々の生活からひらめくことが、新しい柄を生み出すきっかけになっているそうです。
染め上げられた柄に、季節の情景や遊び心を載せる、粋な手拭いの文化は、今もしっかりと息づいています。
株式会社 戸田屋商店
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