6.入会林野(いりあいりんや)を再生する

皆さんは入会林野という言葉を聞いたことがありますか。入会林野とは、集落などの一定地域の住民が昔からの「きまり」や「おきて」などの慣習に従って、木材や薪や炭、家畜の飼料や堆肥を作る草などを採取するために使用している地域の共有林のことです。生活の近代化や地域社会の構造が急速に様変わりしたことにより、入会林野の存在価値は薄れ、その役割を終えようとしています。そんな中で地域資源として森林を見直し、かつての入会林野を再生しようという取り組みが、岐阜県美濃市片知地区ではじまっています。

 

かつて山間地域の生活基盤は森林にあった

現代社会においては、電気・ガス・水道の公共公益施設をライフラインと呼んでいます。それがなければ生活が維持できない生活の命綱です。この中の「ガス」はいつ頃から家庭に普及したかご存知でしょうか。初めて日本で家庭用LPガスが使われたのが昭和28年頃と言われています、そして昭和30年代後半に飛躍的に拡大しました。これを「燃料革命」といい、日本の林業の転機になった時代です。筆者の生家は名古屋市ですが、小学生の頃までは薪でお風呂を沸かしていましたし、薪割りの手伝いもしました。ですから今でもヨキで薪を割ることは若い人より上手いと思います。

特に山間地ではお湯を沸かしたり、調理や暖をとったりするのも、すべて地域の山から得られる薪や炭を使っていました。また、「水」も山からの湧き水を使っていました。農業も、化学肥料が無い時代には、落葉や下草を山から採ってきて堆肥を利用していました。ですから、つい50年前までは地域の山林は毎日のように利用されて、人々の生活に無くてはならない存在だったのです。ところが、ガスや水道の普及により、かつて毎日のように通った山に今ではまったく足を踏み入れる必要が無くなり、地域財産として大切に維持管理されてきた入会林野も、ここ数十年間は無関心に放置されてきたのです。

 

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