12.森林化社会と新しい林業

一年間にわたって、筆者の周りの森林で繰り広げられる出来事やエピソードを感じたままにコラムに書いてきました。タイトルの「続・森林を守る」という題目には及ばない部分や未消化な部分があったことはお許しください。しかしながら経済中心の日本社会が、国土の基盤である森林と、それを守る山村地域のコミュニティーを崩壊させ、森林という地域財産を十分に活用できないでいる地域の一端と、その中でも森の現状をなんとかしようと活動しはじめた人達に触れるうちに、やっぱり森林は地域の財産であり、森林を守り続けることは人類に課された命題であることを、改めて思う次第です。このコラムの最後に「森林化社会」のことについて少し書いて筆を納めたいと思います。

 

森林化社会とは

「森林化社会」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。『現代用語の基礎知識』(1990年版)によれば、「西欧型都市文明、合理効率主義に対抗する価値観として汗を流す喜び、生活者としての感覚と心の豊かさを取り戻す山村地域社会型価値観」と定義されています。「森林化社会」という言葉は「脱都市化社会」を読み替えたものでもあります。都市部を中心とした生活スタイルに対して、森林を起点とする山村地域に生活の基盤を求める人達が、森林を中心とする自然空間の中でライフスタイルを見直そうとする動きとしてとらえることができます。

 

――美しい景観を持ち、そこではフレンドリーなコミュニケーションが得られ、生い繁った樹木に囲まれた家々には平和な生活がある。住民たちの人気(じんき)が実にいいところだ。そのような文化と風土に根差した社会――いわば<森林系に組み込まれた人類社会の極相(climax)の姿>がめざす森林化社会である。その所在は大都会ではなく、地方(region)である。そこに芽生えるこじんまりしたまち(small town)――が森林化社会である。(『森林理想郷を求めて――美しく小さなまちへ』平野 秀樹著 中央公論社1996年 より)  ――と表現されています。

 

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