雑誌「チルチンびと」71号掲載 京都大原の山里に暮らし始めて

水がうまい大原だが……

京都市街地で暮らしていた頃、僕 は喉が渇くとお茶やコーヒーばかり を飲んでいた。ミネラルウォーター を買う習慣はなかったし、水道水は カルキ臭いから飲まなかった。とこ ろが、大原で僕は水道の生水をよく 飲んでいる。ここの水道水がうまい からだろうか? 京都市の水道水の原水のほとんど が、疎水を流れてきた琵琶湖の水だ。 琵琶湖の水はきれいに見えるが、湖 に溜まった水なので、それなりの消 毒が必要なのであろう。いっぽう、 大原の水道水の原水は地下水だ。緑 濃い大原の山の地下水だから、水が うまいにちがいない。 「イギリス人のベニシアさんは汲み 取り式の便所で大丈夫ですか? あ と2.3年で、大原にも下水道が できるから、しばらく辛抱してや」。 住み始めて間もない頃、隣のご主人 が話しかけてきた。ベニシアも僕も、 インドやネパールの山奥を歩き回っ た経験などあるので、水洗便所がな いことなどそれほど気にしない。 それよりも、食器洗いや洗濯に使 った泡だらけの排水が、側溝を伝っ て向かいの田んぼに流れて行くのを 見てびっくりした。やがてその排水 は高野川へと流れて行くのだ。環境 のことを気にしているつもりの自分 が、源流に近い川を汚しているとい う現実を知った。数日前まではきれ いだと思っていた高野川で、息子の 悠仁を水遊びさせていたのに。 大原の水道(大原簡易水道)は民 営で、上水道だけで下水道がない。 それで、浄化槽を家に設置すること が望ましいとされているが、高額な 負担金が各家庭にかかることになる。 近いうちに下水道ができるなら、そ のとき家庭排水の問題は、きっと解 色とりどりにチューリップが咲 く春の裏庭。右奥にある水色の 台の下に井戸がある。 4月下旬になると満開の桜の花が高野川の 川岸を飾る。

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