雑誌「チルチンびと」71号掲載 京都大原の山里に暮らし始めて 梶山正
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13 決されることになるだろう。  我が家には水道の蛇口が3カ所し かなかったが、裏庭には井戸があっ た。そこでポンプと水道管などを買 って、井戸水が出る蛇口を家の中に 据え付けた。学生時代に水道配管工 事のバイトをやっていたので、自分 で配管するこ とができた。 上水道に加え 井戸水の蛇口 も増やしたの で、ぐっと生 活しやすくな った。 ずっと、 待ち続けている下水  早いもので、ここで暮らし始めた とき保育園に通っていた悠仁はもう 大学生になる。かれこれ 16 年が過ぎ たわけだが、いまだ大原に下水道が やって来ない。京都は国際文化観光 都市と言われ、2003年には世界 の水問題について世界各国の人々が 話し合う、第3回世界水フォーラム が国立京都国際会館で行われている。 大原は辺境のド田舎ではなく、国際 的都市の一地区でもあるのに、どう して下水道のような大切なものが設 置されないのであろうか。  昨2011年より、大原簡易水道 は京都市上下水道に組み込まれた。 京都市の下水道料金は上水道使用量 に対して金額が決まり、上下水道料 金を利用者は水道局に払うことにな っている。大原簡易水道が京都市上 下水道に変わったということは、ま もなく僕たち大原の住人が下水道を 使えるようになるということであろ う。実際、いま大原のあちこちで下 水管を埋める工事が行われている。  ずっと待ち続けた下水道が来るの は楽しみだ。これで大原を流れる小 川や高野川が、いまよりもきれいに なるはずだ。僕は期待している。子 どもたちが安心して水遊びできる川 の水に変わって行くことを。  かじやま・ただし 1959 年長崎県生まれ。写真家。山岳 写真など、自然の風景を主なテーマに 撮影している。登山ガイドブックほか 共著多数。84 年のヒマラヤ登山の後、 自分の生き方を探すためにインドを放 浪し、帰国後まもなく、本格的なイン ド料理レストラン「DiDi」を京都で 始める。妻でハーブ研究家のベニシ ア・スタンリー・スミスさんとはレス トランのお客として知り合い、92 年 に結婚した。 同じ町内の平山さんに井戸底の掃除をお 願いした。 我が家の庭で最初に春を告げるのが、梅の花 と細かな黄色い花をたくさん咲かすミモザだ。 上から時計回りに /大きな食器箪笥や古家具でつ くった棚が並ぶキッチン。/モザイクで飾った井戸 の壁はベニシア作。/蛇口をひねると勢いよく、冷 たい井戸水が流れる。

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