両生類の中で一番繁栄しているのがカエルで、世界には約3000種、日本には約30種が生息しているといわれています。

梅雨時にはアマガエル、夏の盛りにはヒキガエルやトノサマガエル、そして藪蚊に刺されながら川の土手で釣りを楽しんでいると、どこからか「グエッ」という鳴き声が。これは蛇に飲まれた蛙の悲鳴。梅雨から夏の盛りはカエルと親しんだものです。アマガエルの皮膚には毒があるのをご存知でしょうか。可愛い顔をして、なかなかしたたかですね。

我がしもたやは東京から埼玉県に入るとば口の和光市という所です。そこにささやかな新居を構えた頃は、これまたささやかな庭から大きなガマガエルが顔を出し、子ども達が幼稚園に行くのを玄関で見送ってくれました。それが何年か続きましたが、ある頃から顔を出さなくなりました。先住者だった彼? 彼女? がいなくなったのは、子ども達の巣立ち同様寂しい限りです。

昔から地方で作られてきた郷土玩具の世界にもカエルがすみついています。その筆頭が愛知県名古屋市の戸部という所で作られていた「戸部の蛙」。昔々、戸部に非常に短気な戸部新左衛門という殿様がいて、隣村の山崎からくる旅人が行列を横切ると、誰彼の差別なくぶった斬ってしまうという凶暴な殿様だったそう。それで「山崎越えたら飛べ飛べ(戸部、戸部)」というこの地名を織り込んだ言葉が生まれたという伝説があります。ここから明治時代に土を手で捻ったカエルの人形が生まれました。手捻りのための自由自在なカエルたちの誕生です。

持っている戸部の蛙たちを思いきって画面に解き放ってみました。ドキッとするカエルもいますよ。どうぞお楽しみに。

可愛い焼き物のカエル

郷土玩具のカエルは非常に少ないですね。三重県の二見が浦で有名な伊勢の興玉神社で授けてくれる「二見の蛙」。可愛い焼き物のカエルです。「無事に帰る」という願いが込められています。
あけび細工の蛙

今は作られていませんが、長野県の野沢温泉のお土産だった「あけび細工の蛙」。地元で採れるあけびのつるを温泉の湯につけ、柔らかくして編んだもの。あけび細工の鳩車は有名で、こちらは今でも温泉土産として健在です。このお土産はあけびを編んで作った土瓶敷から考案されたそうです。

あけび細工の蛙

戸部の蛙とあけび細工の蛙は絶滅種、二見の蛙は絶滅危惧種を免れていますのでご安心を。

裃姿の猫
裃姿の猫

神妙に猫が裃を身に纏い正座をして、右手でお金を、左手でお客を招いています。大阪の住吉大社の末社・楠珺社(なんくんしゃ)で授けてくれる「商売繁盛、家内安全」のお守りです。毎月初めの辰の日に求めて神棚に祀り、48体揃うと「始終発達」という願いが叶ったとされ、神社に納めると大きな猫と交換してくれます。さらなる大きな繁栄を祈ってくれることになるのですね。

毎月初めの辰の日に求める猫=「初辰(はったつ)の猫」、略して「はったつさん」と呼ばれて、古くから大阪で親しまれてきました。昔から思っていますが、48体の猫と大きな猫は等価交換できているのでしょうか? てなことを言うと、不信心者、下衆の勘ぐりと叱られそうですね。ちなみにお金を招く右手を挙げた猫は偶数月、お客を招く左手を挙げた猫は奇数月に授けてくれます。楠珺社の祭神はお稲荷さん。狐がお使いですね。

そこで、春の雛祭に郷土玩具尽くしのお雛様を作ってみました。

春の雛祭に郷土玩具尽くしのお雛様を作ってみました

女雛と男雛はやはり住吉大社で授けてくれる夫婦和合の「裸雛」、

女雛と男雛はやはり住吉大社で授けてくれる「裸雛」

五人囃は「初辰の猫」、三人官女は高松と津の「奉公さん」と八代の「おきん女」、

犬筥は奈良・法華寺の守り犬、

犬筥は奈良・法華寺の守り犬、

狐は京都・伏見人形。いい雛祭になりますでしょうか。
せっかく作ったお雛様、旧暦の雛祭りまで飾らせてもらいます。