news letter 「住まいと健康」を考える 東賢一

世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)による新しい発がん性分類

IARCは、トリクロロエチレンを発がん性分類でグループ1(人に対する発がん性がある)に分類したと発表しました。これまではグループ2A(人に対しておそらく発がん性がある)でした。IARCがこの決定を行ったのは2012年10月のことですが、その報告書が昨年公表されました。

IARCは、トリクロロエチレンに関する最近の研究を評価した結果、トリクロロエチレンは人で膵臓がんを引き起こす十分な証拠があると判断しました。また、肝臓がんと非ホジキンリンパ腫に関しては明らかな関連性があると判断しましたが、十分な証拠があるとまでは判断されませんでした。

トリクロロエチレンは、世界保健機関欧州事務局が室内空気質ガイドラインを設定しています。日本では、大気環境基準が設定されていますが、室内濃度指針値は策定されていません。世界保健機関欧州事務局の室内空気質ガイドラインでは、すでに発がん物質として扱われており、ガイドラインは10万分の1の発がんリスクで23マイクログラム/立方メートルです。

トリクロロエチレンは、1990年代までは金属部品の脱脂や洗浄、1930年代から1950年代頃まではドライクリーニングに広く使用されていました。印刷や繊維の染色、塗料やインキの製造、染料の除去剤などにも利用されています。

トリクロロエチレンは、塩素消毒された上水、汚染土壌や地下水などにも含まれています。シャワーや入浴時、食器洗い機使用時に発生する蒸気が室内空気汚染の原因の1つとも考えられています。その他、木材着色剤、ニス、潤滑油、接着剤、修正液、ペイント除去剤などの使用も室内空気汚染の要因の1つと考えられています。

トリクロロエチレンと似た物質で、テトラクロロエチレンがありますが、IARCの会合で、この物質に関してはグループ2Aのまま据え置かれました。
 

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