news letter 「住まいと健康」を考える 東賢一

欧州連合(EU)が今年報告した「環境と人の健康」に関する報告書

欧州環境庁(EEA)と欧州委員会共同研究センター(JRC)は、複数の環境要因による複合的な健康リスクの研究が必要だとする報告書「環境と人の健康」を今年の5月に公表しました。この報告書によると、欧州ではこれまでの環境政策が功を奏し、大気や水、食品中の汚染物質が減ったため、一般住民の寿命が延び、健康状態も良くなりました。

しかし近年、依然として大気汚染ががんや心臓疾患、呼吸器疾患の原因になっていることが明らかになり、新しい化学物質の使用量の増加や生活様式の変化による新たな健康リスク(肥満や心血管障害、糖尿病、がんなど生活習慣に起因する健康影響等)が発生していると報告しています。

特に小児、貧困者、高齢者といった社会的弱者が生活の中で接する複数の環境要因の複合的影響を詳しく研究する必要があると報告しています。また、社会的地位の低い人々は住環境も劣悪なことが多く、そのために健康を害するおそれがあるなど、環境条件の不均衡が健康格差につながっている可能性があると指摘しています。その一方で、緑地などの自然環境と触れ合うことは、心身ともに大きなメリットがあることも強調しています。

この報告書は、2005年に公表した報告書のアップデート版で、その後の知見をもとに改訂されたものです。化学物質、大気汚染、室内空気汚染、ラドン、水質、騒音、電磁界、紫外線、ナノテクノロジー、緑地空間と自然環境、気候変動について、それぞれ詳説されています。報告書は以下のサイトで入手できます。

Europe’s environment now healthier – but new risks emerging

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